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​​​​​​​​​​​池袋キャンパスにおいて、春季人権週間プログラム講演会『ブラックバイトの驚くべき実態とその対処法』を開催しました。これまで多くの学生の相談にのり、解決にあたってきた渡辺寛人氏に、「ブラックバイト」と「ブラック企業」の実態とその社会的背景、さらに具体的な対処法についてお話しいただき、若者を取り巻く労働環境の実情を知る貴重な機会となりました。また、当日は会場からの質問を匿名で受け付けるサービスを用いて、参加者がスマホやPCで投稿した質問をリアルタイムで表示するという試みも行われました。

日時

2018年6月29日(金) 18:30-20:30

会場

立教大学 池袋キャンパス 8号館2階8202教室

講師

渡辺 寛人 氏
(NPO法人POSSE事務局長、ブラックバイトユニオン共同代表)

参加者

本学学生、教職員、一般

講演内容

 近年、大学生のブラックバイトが社会問題化している。そもそもブラックバイトの定義とは「学生であることを尊重しないアルバイト」のことである。大学生の本分であるはずの学業に支障をきたすほどの過密なシフトを組まれ、授業に出られず単位を落としたり、あげくに留年や退学にまで至る深刻なケースも出てきている。

 ブラック企業対策プロジェクトが行った全国調査によると、これまでアルバイトで不当な扱いを経験した学生の割合は66.9%にのぼる。アルバイト経験のある学生の3人に2人が何らかの不当な扱いを受けたことになる。「試験前なのに休ませてくれない」「商品の買い取りを強要させられた」「上司や先輩から暴言・暴力・嫌がらせを受けた」などの報告が挙がる中、そうした大学生が実際に行った対処法としては「友人や家族に相談した」または「何もしなかった」という人が多数を占めている。そして、ブラックバイトユニオンに寄せられる相談でもっとも多いのが「バイトを辞められない」という悩みである。アルバイトなのになぜ辞められないのか。そこには、一世代前とは全く異なる現代のバイト事情がある。以前はどの職場(主に店舗や塾など)にもいた正社員が、今はほとんどいない。そのためアルバイトなのに、本来なら正社員がやるべき金銭・商品・施設の管理などの仕事をまかされている。戦力として期待されている大学生は自分がいないと職場が回らない状況をよく自覚しており、自分が休むと同僚に迷惑がかかるため、かなり無理をして働いている。そして、「辞めたい」と言う学生に対して経営者側は「懲戒解雇」「損害賠償」などの言葉を使って労働法の知識のない学生を脅したり、責任感を煽ったりして「怖くて辞められない」状況を作り出している。

 さらに、アルバイトをしなければ学生生活が成り立たない現実も、ブラックバイトを増長させる大きな要因となっている。年々上昇する学費と親世帯の収入の減少。一昔前と比べ親からの仕送り額は減っているため、大学生は日々の生活費をアルバイトで賄う必要が出てきた。多少待遇が悪くても、簡単に辞めるわけにはいかず、加えて、今では大学生の約半数が利用しているといわれる奨学金制度も充分ではない。世界の多くの国では奨学金は原則「給付」であるのに対し、日本の奨学金は基本的に「借金」であるため、就職してから返済に追われることになる。借入額を少しでも抑えて卒業後の返済を減らそうと在学中からアルバイト漬けになり、やがてブラックバイトにはまってしまう例が多数ある。

 また、昨今「ブラック企業」問題も深刻である。ブラック企業とは「若者を大量に採用し、過重労働等によって若者を使い潰し、次々と離職に追い込む成長大企業のこと」であり、その手口は「選別型」と「使い捨て型」がある。「選別型」とは大量に採用して使える人材だけを選別するため、辞めさせるための専門部署に異動させて退職に追い込むやり方で、「使い捨て型」は低賃金・長時間労働を強いて、働けなくなったら使い捨てるというやり方である。企業は、どちらも最終的には自己都合退職にもっていくため、実際に行われていた違法行為などについては表向きのデータに表れないのが特徴である。

 ブラック企業に取り込まれる背景としては、今の日本の就活事情が大きく関係している。非正規雇用が拡大するなか、競争を勝ち抜いて手に入れた「正社員」という肩書をそう簡単には捨てられないという若者の気持ちを、企業側はうまく利用している。入社前の説明と実際の待遇が違う求人詐欺や研修での「洗脳」など企業のやり方は様々だが、せっかく就職できた会社だからと精神疾患に追い込まれるまで頑張ってしまう人が後を絶たない。ブラック企業もブラックバイトと同じく、一昔前とは労働環境が大きく様変わりした。以前は過酷な労働であっても、頑張れば頑張った分、見返りがあった。しかし、今は違う。使われるだけ使われてやがて離職に追い込まれる。

 最後に渡辺氏から、働くうえでおさえておきたい4つのポイントが示された。①会社の言うことが全てではない。②諦めない、自分を責めない。③証拠・記録をとる。④専門家に頼る・相談する。会社の言うことを鵜呑みにしないためには、働く側もワークルールを知る必要がある。自分の身を守るために、ぜひ労働法についての知識を身につけてほしい。また、長時間労働だと感じたら、記録をつけることが大切である。労働時間をメモしておけば十分法的に有効な証拠となる。ブラックバイトもブラック企業も、不当なルールは変えることができるが、労働問題を1人で解決するのは容易なことではない。疑問に思うことがあれば一人で抱え込まず、ぜひユニオン(労働組合)や弁護士など労働問題の専門家に相談して解決の糸口を見つけてほしい。どんなに大変な思いをしても、声を上げずに辞めてしまうのでは何も改善されない。ただし、自分がやらなければ誰も代わりに交渉し解決してはくれない。大切なのは、勇気を出して声を上げること、そして「諦めない」メンタリティーを持ち続けることである。

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渡辺 寛人氏