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新座キャンパスにおいて、秋季人権週間プログラム講演会『スポーツにおけるインテグリティと競技能力の向上』を開催しました。講演会の様子は池袋キャンパスでも同時中継されました。
立教大学特任准教授の小川和茂氏と立教大学コミュニティ福祉学研究科修了の村本宗太郎氏に、現在のスポーツにおけるインテグリティとさまざまな問題についてのお話を伺いました。
講演後のパネルディスカッションには法学部教授の藤澤治奈氏も進行役として参加し、活発な意見交換が行われました。

日 時

2018年12月6日(木) 18:30-20:30

会 場

立教大学 新座キャンパス 8号館地下 N8B1教室
(中継会場) 池袋キャンパス 8号館2階 8202教室

講 師

小川 和茂 氏
(立教大学法学部・特任准教授)
村本 宗太郎 氏
(立教大学コミュニティ福祉学研究科修了、静岡文化芸術大学 / 尚美学園大学兼任講師)

参 加 者

本学学生、教職員、一般
合計11名

講演内容

 “インテグリティ”という言葉を知っていますか。“インテグリティ”とは、高潔性・品位・完全な状態・誠実性という意味で使われているが、なぜこういった言葉が使われるのか。近年スポーツをめぐるトラブルが多数発生し、それに共通する原因というのが“インテグリティ”の問題だと言われているからである。
 人はなぜスポーツをしたり、スポーツを見たりするのか。スポーツが持っている価値とは何か。スポーツにはルールがあり、一定の条件・制約の中で何かを成し遂げる、成功する体験を見られるというのは、スポーツにおける大きな価値であり、達成するという状況を見ることによって追体験ができるからである。
 しかし、そういったスポーツの価値を脅かすような事態が昨今、多く起きている。ドーピングや八百長、暴力やハラスメント、さらに、スポーツ団体幹部の不正行為や不正会計、贈収賄なども、スポーツの持つ価値を大きく損なうことにつながっている。トラブルが続いている競技では信頼感が下がり、競技人口が減ったり、スポンサーが撤退したり、スポーツの振興に大きく影響してくる。このほか、競技団体のガバナンスや運営に問題がある場合には、選手選考でトラブルが起きたり、悪いことをしてしまった競技者や指導者に対する処分をめぐって紛争が生じることもある。
 逆にインテグリティが確保・保障されたスポーツ環境におけるトレーニングや練習は、競技者が競技に集中でき、より一層競技能力の向上につながってくるのである。
 なぜこういった不祥事が発生するのだろうか。法律や規則を守るという意識が徹底的に欠けているのは、今までスポーツ団体が、指導者、アスリートに対して指導を十分に行ってこなかったためである。今では、各競技団体や統括団体がガバナンスやコンプライアンスの研修を行っているが、まだ不足している。これは、スポーツ団体運営の不完全さとガバナンスの問題でもある。競技団体は大会の選手選考や、強化資金の配分、強化方針の決定など、その判断がアスリートや指導者に大きな影響を及ぼすにも関わらず、元アスリートが役員をしている競技団体では、権限がその役員に集中しコントロールできない状況である。つまり、法務のプロ、弁護士等がいないので、不完全な規則をつくった結果、トラブルが発生するということになってしまうのである。
 ここ数年、国際的にも、ハラスメントや、虐待の防止に関してさまざまな機関が動いている。IOC(国際オリンピック委員会)ではガイドラインを作成し、ユニセフでは『子どもの権利とスポーツの原則』を公表している。今、日本だけではなく全世界で、スポーツにおけるインテグリティの確保の問題に取り組んでいるのである。
 他にも“練習のしすぎ”と“一方的な指導”の問題があり、アスリートの権利や練習環境への配慮不足が指摘されている。特に大学の部活動では、毎日長時間、休養日なく練習をさせ続け、その結果、大学の講義で居眠りをしたり授業を欠席し、スポーツのしすぎによる疲労で無気力状態になることで、ストレスがたまったり、過食、拒食などの病気になってしまう。また、練習のしすぎは、スポーツ以外に自分には何もないのだと思い込ませてしまいがちである。
 スポーツで若くして成功すると注目を浴びるが、引退した際の絶望感や喪失感はとても大きく、それが引退後の不祥事につながってしまう。また、アスリート自身が自ら考え練習や分析をするのではなく、一方的な指導をしていると何が起きるのか。強制的に何かをやらせる、言うことを聞かないときには、何か物理的な手段を使う、これが体罰につながるのである。
 体罰問題が発生すると、これまで指導者に問題がある、指導方法が悪い、短気ですぐ感情的になる等の個人的な資質に責任を求め、指導者の職を追われたり、部に対して活動停止処分を下すことで問題解決としていたが、これを運動部における構造的な問題として捉え、その発生要因について検討を行う必要があるという意見もある。
 調査によると、指導者からの体罰を指導の一環と捉える部員ほど、指導者と強い信頼関係があり、指導者にも指導方法にも満足しているという結果が出ている。体罰は違法な罰であるにも関わらず、指導の一環として捉え、体罰行為を体罰ではないという意識のまま受容してしまっているのである。その背景には、レギュラーを巡る立場や、様々な決定権限を持つ指導者との関係に対する部員の不安や、勝利を求める保護者や後援会、OB・OG会からのプレッシャーに対する指導者の不安、また指導者や運動部に対し積極的で手厚いサポートを行う保護者との関係性があると思われる。
 これだけスポーツが促進されていて、2020年にはオリンピック、パラリンピックがある中で、トラブルの種が潜んでいる状況をどう変えていくのか。法律、規則を遵守する、コンプライアンスの意識を向上していく、スポーツ団体のガバナンスを向上する。これは必須の条件として、さらに指導者、先輩、上に立つ者が適切な指導方法を習得していくことも大事である。指導方法を適切に、言葉や映像で論理的かつ明確に説明し、アスリートに理解を促して、ともに競技能力向上のための機能をしつつ指導を行っていく。そして何よりも大事なのは、立場や権力、上下関係を利用しないで行う指導、コーチング。共に競技者と歩んで競技力の向上を図るようなコーチに指導してもらうということである。また、練習をしすぎたり、スポーツだけの生活にならないように気をつけることも大事である。
 2019年にラグビーワールドカップ、2020年にオリンピックとパラリンピックが日本で開催されることは、スポーツというものがこれまで以上に多くの関心を集める絶好の機会であり、日本のスポーツというものをもう一段階上にバージョンアップしていくチャンスである。

来 場 者 の 声

・指導者、選手、保護者、大学など指導と体罰の関わり方(境目)の難しい面を学んだ。
・厳しい指導と暴力・体罰の違いについて指導者も選手もお互いの関係性を見直し、再確認が必要と改めて考えさせられた。
・「体罰」に対する世間を包括した問題点を提起され、改めて考えることができた。
・体罰と指導の違いは難しいと思った。
・スポーツは第一に本人が楽しむこと、第二に勝ち負け、そこを指導者が部員に伝えられるか。
・今回は指導者による体罰にフォーカスされていたが、上級生による体罰も考えられる。体罰が問題であることは理解していても、体罰を行ってしまう経緯、起こさないための対策、また、体罰に頼らない育成の手法などの学生向けの講義を行ってほしい。スポーツ指導における体罰の撲滅を目指すには、体罰に代わる指導法を見出すことが重要であると思う。体罰の問題の喚起と共に、今の指導・育成法を大学全体で教えていくことが重要であると思う。

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小川 和茂氏

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村本 宗太郎氏

 

藤澤 治奈氏​

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パネルディスカッション

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講演会場の様子