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2022年6月16日(木)SPIRITのInternet Explorerサポート終了について

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私が「RSL-プロジェクト・プランニング」を履修したきっかけは主体的に地域とかかわりたいという思いである。

今までの高校生活では受験勉強のために日々教室内での座学にとどまって勉強していた。ただ閉鎖的な環境での生活は少し退屈に感じ、大学生になったら座学だけでなく、実際に地域に足を運び、たくさんの人や価値観に触れたいと思っていた。そのため大学入学後は普段の講義だけでなく、「RSL-ローカル(南魚沼)」やボランティアセンター主催の「農業体験」といったフィールドワークに積極的に参加してきた。これらの活動では、実際に自分が感じたことを仲間と共有し自分で整理し直すための「体験の言語化」の大切さやそれぞれの熱い思いを持った方との出会いなど多くの財産を得た。今回の「RSL-プロジェクト・プランニング」でも新たな出会いや経験を積むことができるのではないかと考え、履修することを決めた。

さらに、私は高校生の頃に東日本大震災で被災された地域でのボランティア活動を1回経験させていただいた。当時の現地の方の温かさや自分の目で初めて見た東日本大震災の被害状況などとても心打たれた。たった1回のボランティアではあったがその衝撃は大きく、これからも継続的に関わっていきたいと思うようになった。そのため、大学では復興支援サークルに所属し、サークル以外にも大学で運営している東日本大震災復興支援推進室が主催するプログラムなどで被災地に継続的に足を運ぶようになった。ただ、サークルや支援室のプログラムでもどこか与えられたものや既存のものの下で客体的に現地とかかわっているように感じていた(例えばこれまでの慣習通りにサークルが運営されたり、支援室がプログラムを提供してくださったりという具合である)。だからこそ限られた期間の中でどのようなことに貢献できるかなど、主体性が求められる内容が東日本大震災で被災された地域で展開されているこの科目を履修することを決めた。

(1)事前学習

この科目は9か所の活動先からそれぞれの関心にあったプロジェクトを選択できることが特徴である。私は岩手県陸前高田市広田町で活動されている「特定非営利活動法人 SET」のプロジェクトに参加した。また、この科目では実際に活動先に訪れるまでに行う事前学習、実際にそれぞれの活動先での学外活動、その後にこれまでの学びを振り返り、位置づける事後学習が行われる。

事前学習ではすべての講義でそれぞれの活動先に分かれて学習するのではなく、共通のテーマについてランダムのメンバーとディスカッションし、それを資料にまとめた。その内容は、自分の活動先はどのような背景から活動しているのか、その活動によってどのような影響を与えているか、自分自身は現在、そして将来何ができると思うか仮説を立てることであった。さらに、全体に共通するものとして「誰一人取り残されない社会とは」という問いが設定された。これらの課題はそれぞれの活動先で何が必要とされているのか、それに対して自分はどのように貢献できるのかなどを深く考えるき っかけとなった。また、活動先が異なる学生とディスカッションすることにより、共通の問いに対して自分たちの活動先とは違った角度から活動を行っていることを学び、多様性を実感した。

それぞれの活動先に分かれて実施した事前学習は、まずメンバー同士の顔合わせから始まった。その後に活動先の方との顔合わせが予定されていたため、「なぜ広田町で活動するのか」、「広田町の人たちはSETの事業に対してどのように思っているか」などといった各自が感じた疑問点を共有した。実際に活動先の方とお会いすると、SETの活動内容などを説明してくださるだけでなく、事前に共有していた疑問点などについて話し合うことができた。積極的にコミュニケーションをとることもでき、活動への意欲が非常に高まったことを覚えている。ただ実際に自分たちは現地で何をどのようにするのか、またSETが掲げている「人口が減るからこそ豊かになるまち」とはいったいどのようなものかはっきりせず疑問も感じていた。このように期待と不安を感じながら事前学習が終わった。

(2)現地活動

自分の活動先であった「特定非営利活動法人 SET」は東日本大震災を契機に岩手県陸前高田市広田町へ移住した当時の学生たちなどで設立された団体である。今回の活動内容としては、主に民泊を通じてそれぞれがやりたいと思ったことを民泊家庭の方や広田町に貢献・アクションとして実践することであった。

活動初日はまずSETを設立した代表の方とこれからの5日間どのような挑戦をしてみたいか、それぞれ現状でどのような疑問を持っているかなどの共有をした。これまでに事前学習などで自分なりに仮説を立て、どのような活動にしていきたいかを考えていたつもりであった。ただ前日までいわゆる都会で普通に日常生活を送っていた自分が、海や田んぼ、山に囲まれ生活環境が全く異なる土地での非日常的な生活に馴染めるかどうか、この土地で過ごす5日間で実際に何ができるのだろうかと漠然とふわふわした状態でもあった。

その後、広田町で過ごす初めての夜は、広田町に移住したSETメンバーの方との交流会が開かれた。そこでは夕ご飯を食べながらたくさんのメンバーの方と意見交換をすることができた。この交流会を通してメンバーの皆さんは陸前高田市や広田町で「子どもの教育に携わりたい」、「広田町のファンを増やしていきたい」といった自分のやってみたいことを持ち、それぞれがそれぞれの想いに共感し応援しあえる関係性であることに気づいた。自分は広田町に来てから何ができるのか分からず浮足立っているように感じたが、一人で問題を抱え込むのではなく、同じ志を持った立教生やSETの方と共に今回の活動に取り組みたいと思えるようになった。

2日目は目標決めワークから始まった。自分・メンバー・広田町・社会に向けて今回の活動を通じてどのような状態になっていることが望ましいか期待を込めて共有しあった。ただ、自分から社会へと対象が広がるにつれてイメージできる幅が狭くなり、幸せ・豊かな状態など抽象的な表現になった。しかし、後にも説明するが、この理想的で抽象的な幸せ・豊かさを今回の活動を積み重ねていく中で体感することができた。

その後、SETが運営している事業の1つである「ChangeMakers’ College」の卒業式を見学させていただいた。4か月間の広田町への移住に終わりを告げる会には、それぞれがそれぞれの方法で広田町で得た価値観や将来の夢を表現していた。広田町にそのまま移住する人もしない人もみんなにとって広田町という場所が心のよりどころになっているように強く感じた。

そして、その会の見学が終わるとともにこの5日間を語るうえで極めて重要な経験が始まった。それは民泊である。なぜなら、この民泊での経験が私たちの現地でのアクションと密接にかかわってい たからである。

民泊はメンバーが3組に分かれ、それぞれ異なるご家庭で異なる体験をさせていただくというものだった。夕方から受け入れていただく形となったため、私がお世話になった村上家の方とは夕ご飯の焼き肉をごちそうしていただきながらたくさんのことを語り合った。震災を経験して地域でのつながり方が変化していったこと、SETの活動を通じてたくさんの学生を受け入れてきたこと、陸前高田市のこれからについて、これからも広田町で暮らしていくうえでやってみたいことなどたくさんの想いを知ることができた。つい先ほどお会いした仲であるのにもかかわらず、私たちを快く受け入れてくださり腹を割って語り合えたことは貴重な経験であった。

3日目の午前中まで村上家の方にお世話になったのだが、村上家での民泊はかけがえのない経験で感謝の気持ちを持つとともに、何か自分たちが感謝の意を形に残して伝えることができないのか強く考えるようになった。この想いは異なるご家庭で民泊させていただいたメンバーとも共通したものだった。そのため、それぞれのご家庭に別れを告げメンバーが戻ってくると、民泊でお世話になった方にどのような形で何を伝えるのか具体的なアクションを話し合うことが始まった。

この話し合い、またSETで活動するうえで、とりわけ大切にされていたことがあった。それは多数決で物事を決めるのではなく、全員が納得するまでとことん意見を交わすことである。この決め方はとても時間がかかり一筋縄ではいかないものであった。ただ、みんなが主体的に関わり表現することができるため、新たな答えや道筋を示すことができた時には、それに対し全力で取り組むことができたのである。実際、お世話になったご家庭にそれぞれグループ別に分かれてアクションをするのか、メンバーみんなでお世話になった広田町に対して1つのアクションを行うのか意見が分かれた。ただ、お互いに意見を共有し納得するまで話し合った結果、お世話になったご家庭に対してそれぞれのグループに分かれてアクションをすることが決まった。

私たちのグループでは民泊先で夕ご飯を食べながらお話を聞いていた時に、「地域の人同士が腹を割って話をしていないように感じている」ということをうかがった。そのため、広田町に住んでいる地域の人がそれぞれの想いを表現できるような掲示板づくりをすること。さらに、民泊でたくさんの学生と交流することになったということもうかがったため、その時の記念撮影に使用できるフォトブースを作成することが決まった。自分たちが納得するまで話し合えたからこそ、みんなが積極的に目標に向かって邁進できたと実感した。

4日目は一日中かけて掲示板とフォトブースの作成に取り組んだ。特に掲示板づくりをするにあたり、まずは広田町に住む方がどのような想いを持っているのかを知りたいと感じた。

そのため、数時間かけてほかの民泊先のご家庭や町の中学生、海の監視員さんなどにお話を伺った。初対面である私たちに対して、快く広田町への想いやこれからの未来について表現していただき、子どもたちの素直な考えも聞くことができた。中学生の子は、「仕事があれば町に残るけど、たぶん将来は外で働きたい」、「自然に囲まれて落ち着いた景色が気に入っている」などの声があった。また、「SETの取り組みで Collegeはあるけれども、第一次産業を支えるための経営やノウハウなどを学べるUniversityが欲しい」という町民の想いがあった。

フォトブースの作成では村上家のご夫婦から伺ったお話をもとに、それぞれの好きなものであふれるように心掛けた。フォトブースに関してはこの日のうちに完成することができ、村上家に届けることができた。

【写真1】町への想いを共有する「広田夢咲く掲示板」

【写真2】民泊でお世話になったご家庭に向けた「フォトブース」

完成したフォトブースを渡すと、少し照れ臭そうに「こんなものいるか!」と笑いながら受け取ってくださった。村上家のことを想い、お世話になったご夫婦に笑顔になってもらいたい一心で取り組んだこのフォトブース。作成していた時を思い返すと、とても充実した時間だったと強く実感するとともに、心が満たされ、豊かになったと感じた。私は民泊を経験するまで、「幸せ・豊かさ」といった表現はどこか抽象的で好きではなかった。だからこそ、民泊を通じてこの人のために何か貢献したいという想い、そしてそれに対して真剣に向き合うことを通じて本物の幸せや豊かさに触れることができたのだと思う。

それと同時にSETが目標に掲げる「人口が減るからこそ豊かになるまち」とは、一人一人が積極的に関わり合うことのでき、それぞれのやりたいことをやり抜き応援することのできる環境なのではないかと自分なりの解釈をすることができた。

最終日は、前日に集めた広田町への想いをまとめ掲示板を作り上げた。そしてこの5日間の総括としての報告会に向かった。この報告会では、民泊先の方やSETとのかかわりが深い街の方などが参加した。そして、各グループがこれまでに準備し、実行してきたアクションをみなさんに向けて報告した。

【写真3】絵を描くことを夢にしている町の方へ「未来の作品を飾る額縁」の製作

それぞれのグループがこの5日間を経て感じた様々な想いを胸に、全力で取り組むことができたアクション。今回のプロジェクトの集大成として、それぞれのやりたいことを実現できたことはすごく自信にもつながり、町の方と幸せなひと時を過ごすことが本当に感慨深かった。

以上のように「特定非営利活動法人SET」や広田町の方々と過ごした今回の活動では、ここでしか感じることのできない貴重な経験を積むことができた。

【写真4】民泊でお世話になったお仕事で忙しい町の方に向けた「ランチタイム」

(3)事後学習

事後学習では、事前学習の際に取り組んだ資料作成と同じテーマで、考えの変化や新たな経験などを言語化していった。言語化することにより自分が経験した「人口が減るからこそ豊かになるまち」や「幸せ・豊かさ」というものは何を意味するのかなどについて整理することができ、この経験を今後どのように生かしていきたいかを考えるきっかけにもつながった。さらにその後には異なる活動先の学生と改めて「誰一人取り残されない社会とは」という共通の問いに対して話し合った。それぞれの活動先での体験を共有しながら話し合うことができたため、事前学習の時よりも自分の経験をもとに深く考えることができた。

これまで私は復興支援という形で被災地に足を運ぶことが多かった。そのため、現在も大学を通じて、また個人で継続的に陸前高田市をはじめとした地域に赴いている。ただ、今回の「RSL-プロジェクト・プランニング」を通じて現地に行くにあたり少し意識が変わった。それは「被災地に行くというよりも、地域の方と交流し多くの出会いを大切にしたい。そしてそれが復興支援という形につながれば良いな」と思うようになったのである。その背景として、広田町で過ごした5日間は肯定的な意味で被災地で活動していることを忘れ、広田町の方のためにという意識で活動していたからである。このような意識を持つことができたため、より現在の地域の方に関心を向けどのようなことが私たちにできることなのか、今まで以上に地域のために寄り添った活動をしたいという意識になった。

今回の「RSL-プロジェクト・プランニング」を履修するうえで、主体的に地域とかかわることを自分の目標としていた。実際に活動する中で、どのようなアクションをするのかメンバー同士で模索しながら自分たちができることに取り組んでいった。活動期間中に自分たちで目標設定し、そこにコミットできた経験は自信にもつながった。それと同時に、今回は4泊5日という短い期間での活動だったため、もっと長い期間で主体的に地域とかかわっていきたいと考えるようになった。そのため、現在は春休みに開催される「復興・創生インターン」にエントリーしている。これは約1か月半の間、岩手・宮城・福島の被災地企業や団体が抱える課題を協働で解決に取り組むというものである。そして、このような継続的なかかわりを続けていき、いずれは訪れる場所ではなく帰ってくる場所といえるような関係性をつくることが今の私の目標である。

コミュニティ福祉学部 コミュニティ政策学科 齋藤 優太
(2019年度履修)