2022年6月16日(木)SPIRITのInternet Explorerサポート終了について
2022年6月16日にMicrosoft社によるInternet Explorerのサポートが終了しました。 それに伴い、SPIRITにおけるInternet Explorerのサポートも終了します。 これまでInternet Explorerを用いてSPIRITを閲覧されていた方は、Google Chrome、Microsoft Edge、Firefox等他のブラウザをご利用ください。
池袋キャンパスにおいて、春季人権週間プログラム講演会『SNS拡散力の光と影-ネットワーク社会における世論、書き込み、炎上-』を開催しました。本学社会学部教授の木村忠正氏と立教池袋中学校・高等学校教務部長の内田芳宏氏に、SNSの拡散力について「研究成果」と「経験値」という異なる観点からお話いただき、SNSのもつ社会的な影響力について考える貴重な機会となりました。
今や私たちの生活にすっかり浸透した、LINEやTwitterといったSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)。新たな友人関係を広げたり、仲間同士で気軽に連絡を取り合ったりと便利に利用できる反面、投稿した内容が思わぬ誤解やトラブルを生んだり、炎上してしまうケースが増えている。
日本でもこの10年ほどの間に急速に発達したSNSについて、まず最初に、ネットワーク社会論の専門家である本学社会学部教授の木村氏が、日本社会におけるソーシャルメディアの普及と拡散・炎上の構造について説明した。従来の世論形成では、発信者であるマスメディアが流したニュースに対し、受信者である私たちの多くは受け身の立場であったが、インターネット空間では、受信者が同時に発信者となり、SNSなどのソーシャルメディアに多様なコメントを投稿することが可能になった。特に、匿名の陰に隠れている意識から、無責任で不適切な発言が繰り返され、炎上が生じやすくなっている。長年、ネット世論について多様な調査研究に取り組んでこられた木村氏によると、SNSに流れる大量のコメントに目を通すことを介して強く感じるのは、炎上という現象はごく一部の人が加担し過激な批判を繰り返し発信しているに過ぎず、実際には投稿者の9割以上は比較的平穏なコメントをしているのだが、ごく一部の「尖った」投稿者たちのコメントが何度も繰り返されることで優勢に感じられ、それがあたかも世間一般の見解のようにとらえられがちだということである。確かにネット世論とは社会一般の世論とはかけ離れ、偏ったものであるという見解はあるが、研究を進めていくと単純にそういうことではないということもわかってきた。ネット世論とはあくまで一つ一つのコメントの集積であり、それらについて様々な感情を持った受信者が自分の言葉でリツィートをするといった、<言説-感情-行動>の複合体としてとらえるべきである。一部では過激で暴力的な表現が繰り返されるという現実を受け止めつつ、社会全体の変化に敏感になり、自分がどうふるまうべきかをきちんと見極める力が今、求められている。
続いて、立教池袋中高教務部長の内田氏が、中高生と接する現場から見えてくるリアルな声を伝えた。中高生の代表的なトラブルには、①SNSの誤使用 ②誤解した知識 ③わかっているけれどやってしまった という大きく3つのパターンがある。①の誤使用については、仲間内だけに送ったつもりが外部に漏れていたという人為的ミスが代表的な例である。また、特定ユーザー同士の閉じられた世界では、ある人を仲間はずれにするという確信的な利用もあり、取り返しのつかない事態に発展するケースもあって深刻である。②については、匿名性のもとでは個人は特定できないはずだという過信が挙げられる。学生が普段よく使うLINEも匿名で登録できるが、投稿内容や位置情報、複数のSNSのプロフィール情報などから名前や住所が特定される可能性は十分あるのに、匿名だから大丈夫と思いこんでいる学生が多い。③については、例えば動画を投稿した時、再生回数を増やして注目されたいためにもっと過激に、もっとすごいことをしなくてはとどんどんエスカレートしてしまい、やがて引き際がわからなくなる。
リスクを考えて中高生にLINE禁止と言うことは簡単だが、これだけSNSが身近にある今の世の中で禁止することは現実的ではない。それよりも学校側の対策で重要なのは、正しい使い方を啓発すると同時に、もっとうまく活用できるようSNSとの共存を訴えかけていくことである。それにはまず、学生にきちんとした日本語表現能力を身に付けさせることが先決である。トラブルに巻き込まれないためには、送信する前に文章を見直すこと、自分がこれを発信したら相手はどう思うだろうかと想像力を働かせること、そして言葉の重みをきちんと理解することである。情報の拡散力の速さは昔とは比べ物にならないが、大切なのは、基本に立ち返って日本語を大切にすることである。
木村 忠正氏
内田 芳宏氏
質疑応答の様子
講演に真剣に耳を傾ける参加者たち