新座キャンパス周辺、志木駅、新座駅などで、ベトナムやアジアの若者たちを見かけたことがあるだろうか?彼・彼女らは、日本に来ている「外国人技能実習生」かもしれない。 これまで数多くの人身取引問題と闘ってこられた鳥井一平氏が、日本における人身取引の一形態であるこの「外国人技能実習制度」について講演した。 日本で「外国人労働者」に注目が向けられるようになったのは、2013年9月に「東京オリンピック・パラリンピック」の開催が決定したことがきっかけであると言われている。今後予定されるオリンピックに向けての整備や建設を担う労働者不足が深刻な問題となってきたのである。また、2014年頃に「子どもの数が33年連続減少、世界最低水準」「2050年には国土の6割が無人に」という人口減少問題が国交省から発表され、話題となった。 今回のテーマ「外国人技能実習生」は、1993年に日本政府が整備した「開発途上国等の経済発展を担う『人づくり』に協力する “国際貢献”」を目的として作られた、外国人技能実習制度を利用して日本に働きに来た人たちである。 しかし、その仕組みと実態についてはあまり知られてこなかった。 その実態としては、低賃金(時給300円、労働時間は月/230時間以上、時間外労働/単価10銭~20銭)労働、不当な費用搾取(強制貯金、罰金制度―トイレの使用時間は1分15円、布団・家電リース代 他)、セクハラ、パワハラ、暴力が日常的に行われるケースが後を絶たない。パスポートを没収され、携帯電話の所持禁止など、行動を制限された実習生たちは、外界との連絡を絶たれて助けを求める手段もない。母国で多額の保証金を借金して仲介機関に支払ったうえで、日本に来た実習生たちは、経営者とトラブルを起こせば、直ちに強制帰国させられ、預けた保証金は没収される。家族にも多大な迷惑がかかる事態を避けるために、黙って耐えるしかない。この話は、あなたの身近に存在する工場や農場などで実際に起こっている現実の話である。 鳥井氏が実際にトラブルの起きている農家や工場の現場を訪れると、経営者は、驚くことにごく普通の人だという。それがなぜ、「邪悪な欲望に変貌する社長」となってしまうのだろうか?それは、外国人技能実習制度が、著しい支配従属関係になってしまう構造を持つ制度だからだ。安価で雇うことができる外国人への差別意識も根底にある。 この技能実習制度は不正行為、人権侵害、奴隷労働、人身売買を生み出し、民主主義社会を支える「労使対等原則」を崩壊させ、普通の人を「邪悪な欲望に変貌する社長」に変えてしまう恐ろしい制度であるという。外国人技能実習制度を廃止し、労働者を労働者として受け入れていくことが必要不可欠だ。 日本は、多くの外国人労働者によって支えられていることを忘れてはならない。事実を直視する力を育み、外国人労働者を社会の一員として、共に生き働く仲間として受け入れ、隣人であるという感覚をつかんでほしい。それが、すでに始まっている多民族・多文化共生社会において、人権を尊重し、平和を作り出していく重要な課題であると鳥井氏は強く訴えた。 |