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【新座キャンパス開催】2017年度 秋季人権週間プログラム講演会『映画「ちづる」上映会及び監督による講演会』を開催しました。
2018.1.10
新座キャンパスにおいて、秋季人権週間プログラム講演会『映画「ちづる」上映会及び監督による講演会』を開催しました。赤﨑監督自身から、「映像の世界」との出会い、映画「ちづる」完成に至るまでのエピソード、自身と同じくしょうがいのある人の兄弟姉妹「きょうだい」の人たちとの繋がり、現在、福祉施設で働いている経験からしょうがいのある方たちとの共生社会の課題についてご講演をいただきました。
映画「ちづる」は、立教大学 現代心理学部映像身体学科を卒業した赤﨑正和監督が、自身の卒業制作として企画したドキュメンタリー映画である。“妹が僕に映画を作らせた” この映画は、重度の知的しょうがいと自閉症を持った監督の妹・ちづるさんとその母を1年に渡り撮り続けた、みずみずしくも優しい家族の物語である。最も身近な存在でありながら、正面から向き合えなかった妹にカメラを向けることから家族の対話は始まった。 赤﨑監督は、冒頭の挨拶で「この映画を作りたいと思ったのは、妹(ちづるさん)の事を友達にカミングアウトしたい、という気持ちがきっかけです。」と話された。ちづるさんは、よく笑い、その場を明るくする赤﨑家のムードメーカー的な存在だ。一方で、彼には小学校の頃、仲良くなった友達に、妹・ちづるさんのことをふつうに話したつもりが、気まずい雰囲気になってしまった苦い経験があった。その後、友達とは、妹・ちづるさんの話題は避けてきた。18歳の時に父親を突然の交通事故で亡くした監督は、心を閉ざして大学受験に向けてひたすら勉強をするロボットのような毎日だったと当時を振り返る。その合間に観た映画から「勇気」をもらい、人の気持ちを前向きにする「映像の力」に惹きつけられて、立教大学の現代心理学部映像身体学科へ入学を決めた。3年次に、卒業制作で漠然と「ドキュメンタリー作品」を撮りたいと考えてはいたが、テーマが決まらずにいた赤﨑氏と担当の池谷薫先生との「出会いと葛藤」が、この映画を素晴らしい作品へと導いた。初めて自身の生い立ちについて話し、「しょうがい者への差別に復讐したい」と提案した。先生から「妹をとればいいじゃないか。」と言われて、「これまで隠してきたので、嫌です。」と即答したが、自分は、当たり前に家族のことを話せなかった自身の壁を、いつかは乗り越えなくてはいけないと思い始めていた。それが妹のちづるさんを撮るきっかけになった。 当初、赤﨑氏は、妹・ちづるさんだけを撮るつもりだった。「いつ妹のことを聞かれるだろう?」びくびくしてきた人との付き合い、映像でみんなに観てもらえれば隠し事をしなくて済む、うまく付き合えるようになるかもしれないと考えたと話す。 1年間撮り続けた約30時間の映像の編集作業では、妹・ちづるさんだけを登場させ、母や自分を含めた家族の関係性がわかる映像を入れたくないと赤﨑氏は考えていた。しかし、これが池谷先生と真っ向からぶつかることになった。「赤﨑、なんでお前は、しょうがいにこだわるんだ。俺にはふつうの家族3人しか見えないのに、差別しているのはお前なんじゃないか?」池谷先生の言葉に赤﨑氏は、自分も同じように差別の目を持っていたことに気づかされ、愕然とした。それをきっかけに、妹・ちづるさんのしょうがいを伝えるのではなく、家族を描くことで、妹の独特なキャラクターを伝えることにする方向性が見えてきた。 この映画の上映をきっかけに「実は自分のきょうだいもそうなんです。」自身と同じくしょうがいのある方の兄弟姉妹「きょうだい」と出会えること、そして普通に笑いながら話ができる環境になれたという子どものころからの夢がかなったと話した。今の社会は、小学校から「普通学校」としょうがいのある子たちは「特別支援学校」に分けられてしまう。友達になる機会がなかっただけで、お互いをよく「知る」ことが出来れば、何も言わなくても親近感を持てるようになるということを映画を通して知ってほしいと願う。 赤﨑氏は、現在、福祉の現場で働いている。重度の知的しょうがいを持った人たちの中には、ことばで表現が出来ない人たちが多い。「今、どういうことを感じているのか、考えているのか?」をもっと知りたいと思う。しょうがい者を支える環境には在宅、地域、施設といろいろあるが、形や場所ではなく、「そばにいる人との信頼関係が築けているか、信頼できる人と生活が出来ているか」が共生社会にとって、最も重要なことだと赤﨑氏は語った。
赤崎 正和氏
講演に真剣に耳を傾ける参加者たち