“セクハラ(セクシュアル・ハラスメント)”は、「性的な嫌がらせ」という意味である。自分が嫌なのに、性的な言葉とか行動をされるということがセクハラに当たる。セクハラは職場や学校など密接な社会関係を背景に、密な人間関係があるから断りづらいという状況で、性的な嫌がらせが行われている。 今回は「職場(アルバイト先)におけるセクハラ」「就活中のセクハラ」「妊娠・育児・介護中のマタハラ」の3つのセクハラについて、参加者によるロールプレイと事例を通して、セクハラとは何か、実際遭ったらどうしたらいいのか、自分の身の守り方など学ぶ機会となった。 「職場におけるセクハラ」は、性的な冗談、からかい、食事やデートへの執拗な誘い、性的な関係を強要する、体に触る、わいせつなポスターを社内に貼るといった性的な言動の他に、「男だから」「女だから」という発言や、女性だけにお茶くみや掃除をさせる等の性別役割分担に基づく性的な言動も含まれる。また、異性だけでなく同性に対する行為も対象となり、オフィス内だけでなく職務の延長と考えられる場所での言動も含まれる。この「職場におけるセクハラ」は特に法律上規定されていて、使用者・会社に対し、セクハラが起きる前の事前措置(セクハラに対する方針の明確化・周知・啓発、相談に対応する窓口の整備)、起きた後の事後措置(事実関係について正確な確認・調査、加害者に対する懲戒処分、被害者のメンタルケア、相談対応)、 これと合わせて再発防止・プライバシーの保護のための措置・不利益防止措置することを義務付けており、これらの措置を講じなかった場合、会社は助言指導もしくは勧告を受け、さらに勧告に従わなかった場合は公表される。 セクハラは「人格権」と「自己決定権」という憲法で保障された根源的な権利を侵害する悪質な行為である。性的な言動をされて自分が嫌だったら「嫌だ」とはっきり言うことが憲法上の権利である。セクハラ被害者に対して、嫌だったら嫌だと言えばいいではないか、その場で叫んで抵抗したらいいではないかと安易に思われるが、実は、そう簡単に抵抗したり大声を出したり助けを求めたりできないものである。被害者は内心で著しい不快感や嫌悪感を抱きながらも、職場の人間関係の悪化、不利益を懸念して、加害者への抗議や抵抗、会社への被害の申告を差し控えたり、躊躇したりすることが少なくない。人間関係を背景に行われているため、矛盾するともとれるような行動をとってしまうことがあり、抵抗がなかったとしても安易に同意があったと考えてはならない。被害者自身も自分を責めることなく、まずは嫌なことは嫌だと言って自分を大切にすること、そして会社のセクハラ窓口や信頼できる人に相談するということが大切である。 近年、学生が被害に遭い問題となっているのが「就活中のセクハラ」である。面接官が私的な目的で就活生に連絡し、面接官と就活生という明らかな上下関係を利用して、個人的な面会や交際を強要したり、リクルーター制度をとっている会社やOB訪問などでも、採用活動の一環として社外で会う時にセクハラが起こっている。不必要に夜遅い時間や急に呼び出されるなど、嫌だなと感じたらはっきりと断る、そしてあきらめず自分を大切にすることが大切である。何かあったら、学校のキャリアセンター,人権・ハラスメント対策センターや、会社の就活生向けのセクハラ相談窓口、その他各都道府県労働局の雇用環境均等部の相談窓口など、信頼できる人に相談してほしい。 この他にも妊娠、出産、育児、介護などの家庭的責任を負う人の制度利用や、そういった状態に対して嫌がらせや不利益取り扱いをすること(いわゆる「マタハラ」)も近年大きな問題となっている。均等法で、これらの妊娠、出産等を理由とする不利益取り扱いは禁止されており、事業主に対し妊娠、出産、育児、介護ハラスメント防止措置義務が課されることになり、これに加えてマタハラ指針、育介指針というハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置を企業に課している。妊娠、出産、育児、介護の制度というのは、誰もが家庭的責任を負いながら仕事を続けるための権利、法律上の権利であり、社会で共通認識を持つ必要がある。職場での育児などの制度への知識、理解が必要で、制度を利用させることやハラスメントを防止する措置をとることは事業主の義務である。このような「マタハラ」についても会社の窓口にまず相談することが非常に重要で、その他では、都道府県労働局の雇用環境均等部が対応して、紛争解決援助や調停といった手段をとることができる。労働組合や弁護士に相談する方法もある。 セクハラに遭ってしまったらすぐに相談すること。心身に不調を感じたら、無理せずすぐに専門家に相談すべきである。そしてセクハラに合わないように自分を守ることが大切である。 |