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2022年6月16日(木)SPIRITのInternet Explorerサポート終了について

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新座キャンパスにおいて、秋季人権週間プログラム映画上映『愛と法』&講演会『僕がゲイで良かったこと』を開催しました。
映画『愛と法 OF LOVE & LAW』は、大阪の下町で法律事務所を営む弁護士夫夫(ふうふ)と、そこに全国から相談にやってくる“自分らしさ”のためにたたかう人々を描いた文部科学省選定の映画であり、国際映画祭でも賞を受賞した話題作で、2018公開以来、現在でも自主上映会が全国で開かれています。
この映画上映に先立ち、男性同性愛者であることを公言した日本で最初の牧師であり、立教大学兼任講師の平良愛香氏に、同性愛についてご自身の経験や、同性愛者を取り巻く環境についてお話を伺いました。

日時2019年11月11日(月)17:30-19:30
会場立教大学 新座キャンパス 8号館地下 N8B1教室
講師 平良 愛香 氏
(1968年沖縄生まれ。男性同性愛者であることを公言して牧師となる。現在、日本基督教団川和教会牧師。農村伝道神学校教師、桜美林大学・立教大学兼任講師。セクシュアル・マイノリティ・クリスチャンの集い「キリストの風」集会代表。)
参加者本学学生、教職員、一般 合計35名
講演内容平良氏の名前“愛香”は活動名ではない。平良氏が生まれ育った沖縄は、戦後アメリカの支配下にあり、ベトナム戦争で戦闘機が沖縄から飛んでいくことに、沖縄の人々は「加害者にはなりたくない」と心を痛めていた。クリスチャンであるご両親も平和を嘆き求め祈りを捧げる中で、聖書の中の一書、平和を嘆き求める“哀歌”に共感し、生まれてきた子に“愛香”と名付けたのである。
平良氏は子どもの頃、女の子に間違われるこの名前が嫌いだと母親に打ち明けると、“それなら変えれば?”と言われ、男らしい名前を模索した。しかし、 “愛香”という名前を理解し、再度自分自身でつかみ取った時には、同じ名前でも窮屈で嫌いな名前ではなくなっていた。世の中にはこういった名前や性別、環境など与えられたもの、押し付けられたものがいっぱいある。それが自分にとってしんどい、窮屈なのであれば、そのまま受け入れるのではなく、自分がどうやって生きていきたいか考え、気づき、探して、つかみ取っていくことが大事なのであると平良氏は話す。
“あなたは偶然生まれてきたのではなく、神様はあなたがこの世界に必要として作られた。あなたにしかできないことがあるのだから、自分らしく生きなさい。”と、ご両親から他とは違う生き方を尊重されて育てられた平良氏だが、中学生の頃、気になる対象が異性ではなく同性であることに気づく。不安で性に関する本を片っ端から読むが、自分のことを説明してくれる文章には出会えなかった。また、同性愛者は周りから嫌悪されていることに気づき、高校生になると、自分は欠陥人であり、間違って生まれてきたと思い始め、同性愛者であることを一生隠そうと心に決める。信仰していたキリスト教の教えから、バレたら拷問にあう、同性愛は罪であり、神様からも嫌われ、生きていく場所がないと毎日死を考えていたが、それでも死ねなかったのはまだ1秒も自分らしく生きていないと思ったからだと平良氏は振り返る。高校2年の頃、苦しくて誰かに話さないと生きていけないところまで追い詰められ、失敗したら死ぬかもしれないという命がけの覚悟で、初めて親友にカミングアウトをした。震えと汗と涙が止まらない状況で、話すのに1時間かかったが、親友はその気持ちをしっかりと受け止め、関係がさらに良くなった。苦しくつらい気持ちから解放され、本当の自分でいることができるようになった平良氏は、他の友人にも新しい関係性を築くための第2のカミングアウトが出来るようになった。しかし、同性愛者の中にはカミングアウトしたことでアウティング(本人の了解を得ずにその人のセクシュアリティなどを第三者に暴露すること)され、誰も信用できず、自分すらも信用できなくなり、恐怖から自死する人もいる。実は同性愛者は自殺率が非常に高いのである。また、東日本大震災の被災地などでもLGBTの人々が瓦礫の中に必死に隠していたものが置き去りになり、自分がLGBTであることが知られてしまうと毎日おびえながら苦しんでいるという。支援物資の中にもLGBTの人が必要としている物資は含まれていない。元々苦しんでいる人たちは災害によってさらに苦しんでいるのだと平良氏は言った。
短大で学び、人生で初めて恋人ができた時、同性愛は人権の問題であり、裁判で闘っている人がいることを知り、自分も何かできないだろうかと考え始めた。そんな時、「同性愛者は周りにいない、見てみたい」と話す人々をみて、これでは差別がなくならないと思い、平良氏の社会に対する第3のカミングアウトが始まった。同性愛者には会ったことがない人、今までカミングアウトされていない人は、周りに同性愛者がいないのではなく、気がついていないのであって、命がけで隠している同性愛者から信頼されていないのである。同性愛者は絶えず味方を探している。「同性愛者はあなたのすぐ目の前にいます。気づいてください。差別しないでください。」と平良氏は言う。
その後牧師になろうと上京し、社会活動を始めると、ずっと孤独だと思っていた自分にも多くの仲間がいることに気がつく。こんなにも共有できる仲間がいることを、地方で孤独に感じている仲間達に発信しないといけないと、平良氏は、「あなたは独りぼっちではない。あなたはそのままでいい。」と第4のカミングアウトでエールを送った。
現在、性は多様でセクシュアリティは100人100通りであること、誰一人として同じではないことについて、第5のカミングアウトを重ねている平良氏は、「僕がゲイで良かったことは、いくつもある。」と言う。それは、いろいろなことを考えるチャンスになったこと、素敵なパートナーと出会い、対等なパートナーシップが出来ていること、自分が同性愛者である前に男性であり、知らない間に女性を貶めていることに気がつき、全ての人が差別者にも被差別者にもなりうるということに気がつくことが出来たことだと話し、講演は終了した。
来場者の声
  • 先生はご家庭ですごくいい教育を受けてこられたなあと思いましたが、お名前も、セクシュアリティもキリスト教徒の折り合いも、大変な戦いで模索し、受け取ろうとされていることがわかりました。先生が死を選ばれず、人々に伝えるお仕事をされていることを感謝します。
  • 同性愛者で性の指向が違うだけで、こんなにも自分の人生や社会への視点が変わることを知った。また、それを知ったうえで友達にゲイである事をカミングアウトすることは、親しい関係でデリケートな話題だからこそ、葛藤が生まれるのだろうなと思った。自分の人生を深く考えていて自信を持っていて落ち着いていて、素敵だと思った。
  • 沖縄の基地問題について、またベトナム戦争について、実際に現地の方々がどう感じていらっしゃるのか、「これ以上加害者になりたくない」ということは感情で内地の人間には想像できないショッキングであり、改めて歴史の重みを感じました。先生ご自身のライフトークも大変興味深く拝聴しました。
  • 自分らしく人と違うところを喜び、必要があって生まれてきたというお母様の方針が素晴らしいと思いました。命がけで隠していることを最初に受け止めた友人の存在が良かった。現在5段階のカミングアウトで素晴らしいです。味方・理解者として受け止めていただけるようになりたいと思った。自殺は一番不幸なことなので不作為・不幸を少しでも減らせるよう残りの人生を生きたいと思います。

平良 愛香 氏

講演会場の様子

映画上映会の様子