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池袋キャンパスにおいて、秋季人権週間プログラム講演会『就活生へのセクシュアル・ハラスメント』を開催しました。講師にBusiness Insider Japan記者の竹下郁子氏をお招きし、現在起きている就活セクハラの背景について、また、女性だけに課せられるパンプスや眼鏡、メイクなどの身だしなみの規定についてもお話しいただきました。

日時2019年12月12日(木) 17:30-19:30
会場立教大学池袋キャンパス14号館5階D501教室
講師竹下 郁子 氏
(Business Insider Japan記者)
参加者 本学学生、教職員、校友、一般
合計35名
講演内容

 2019年度秋季講演会として、今回はWebメディア Business Insider Japan記者の 竹下郁子さんを講師にお迎えし、大学生を取り巻く「就活セクハラ」の問題についてご講演いただいた。

 冒頭、竹下さんが就活セクハラの問題と関わるようになった経緯について紹介があり、本格的に就活セクハラの問題を取材するようになったきっかけは、2019年の1月ごろ、自分のオフィス近くの喫茶店で偶然居合わせたOB訪問のシーンで、明らかなセクハラ行為を自ら目にしたことだったという。

 就活セクハラの被害にあった学生の声を集め、2月中旬に記事を出した。その際、アンケート調査を実施して764名から回答を得たそうであるが、回答者の376名が何らかのセクハラ被害を経験したことが明らかになったという。

 そもそも就活セクハラとはどのようなものか。日本労働弁護団発行のパンフレットをもとに、「面接中に、結婚、出産、女らしさを求めるなど、個人的なことを聞かれる」「不必要に遅い時間に二人だけにされる」「面会の場でお酒を強要され、ホテルに連れ込まれそうになる」等の事例を具体的に紹介した。

これまで50人以上の被害学生にインタビューを実施し、就活セクハラが出現する現場として、主にOB訪問、リクルーターによる面接、インターンシップなどが挙げられるという。

 被害についても、上記OB訪問等の事例における身体的な接触、さらには面接の際に業務とは無関係な性的な質問や学生の人格を否定する言動など、学生が就活を継続できないほどに傷つく事例が存在し、就活セクハラの被害が深刻化している実態を竹下さんは指摘する。

 こうした就活セクハラは、2月と3月に報道された2つの大きな事件がきっかけとなり、その後社会問題に発展したと紹介した。就活セクハラが横行する原因的な問題として、採用側の人権意識の希薄さが根底にあると前置きしたうえで、企業の採用プロセスの一部が複雑化かつブラックボックス化していることの問題を指摘する。企業側と学生側にもともと横たわる採用する側・される側という権力関係が、このブラックボックス化している状況の中で、支配・被支配の関係へとエスカレートし、学生の人権が脅かされる事態が発生していると考察する。

 また、マッチングアプリの匿名性も被害を助長している側面についても注目し、就活がこうしたマッチングアプリの活用を半ば前提化していることについて問題提起する。つまり、就活がより学生個人の中で自己完結するスタイルへと移行し、学生に対して結果的に「どうせ悪いのは自分だ」という自己責任の感覚を強いることで被害が潜在化してしまっている可能性があるのだという。

 こうしたことから、就活セクハラの防止や発生後の対応について、今後の大学の役割は大きくなるという。問題が発生した場合、あるいは発生しそうな場合に、企業に対する申し立てなどを学生に代わって行うなど、学生の側に立った機能や仕組みを大学が積極的に整備していくべきと提唱する。

 就活セクハラが社会問題化する中で、政府も対策に乗り出しており、国会で法改正に向けた協議がなされ、就活セクハラ防止に向けた付帯決議が採択されたこと、企業側も具体的な対策を講じ始めていることについて、竹下さんは一定の評価を与えるが、例えば厚生省所管の労働政策審議会で作成された指針案が、就活生を労働者と同様の保護措置対象として明確に位置付けるに至っていないところなど、まだまだ課題が多いと指摘する。

 講演前半の締めくくりとして、学生団体がこのたび発表した就活セクハラの被害声明を紹介した上で、学生が具体的に声を上げていくことで、社会的な問題の解決・改善に大きな力になると呼びかけた。

 本学キャリアセンターより、同センターの取り組みについて紹介が行われたのち、続く後半の講演において竹下さんは、石川優実さんが始めた#KuToo運動を取り上げた。

 #KuTooは、いわゆる#MeToo運動にヒントを得た抗議表明の活動であり、賛同者の輪が広がっている。#KuTooが訴えるのは、企業が働く女性にパンプスやハイヒールの着用を強制することによるセクシュアル・ハラスメントの存在である。竹下さんの取材によると、靴の種類を強制するといったことにとどまらず、服装(衣類)や化粧など、意外なところでは、接客業を中心にメガネ禁止という会社に勤務する被害者がいることも明らかになったという。

 女性だけが事実上強要される就活上のルールや慣習が横行している実態が明らかになるなかで、女性の評価基準が、職務の内容にもとづいた評価を超えて、「女性は職場の華であれ」という価値観が押し付けられていると指摘する。

 近年、この問題については企業の動きも早く、例えばKDDIが今年ドレスコードを廃止、JALはスカートとズボンを選択可能、JR東日本は仕事の機能性を考え男女ともズボンの制服のみとするなど、制服規定の見直しに動いている。また、靴の規定については携帯三社がスニーカーの導入など、パンプス着用を強制しない動きもある。これらは公平性やジェンダー配慮から、性別によって服装を規定しない方針を打ち出した重要な決定であると、企業の動きに期待を寄せる。

 竹下さんは、より重要なこととして、国の対策が急がれると強調する。今年の臨時国会でも、実は#KuTooやメガネ着用問題が厚労委員会でも議論され、男女雇用機会均等法の趣旨に照らせば、実態は合っていないということを国側が認めたというのは大きな前進としつつも、現時点では注意喚起をパンフレットに掲載するという対応にとどまっており、実効性を確実なものとするために、男女雇用機会均等法の改正や先に言及した厚労省の指針に具体的に盛り込む必要性があると指摘する。

 講演の最後に、実際の被害者の多くは、非正規雇用で接客業についているなど、社会的に弱い立場に置かれているために、声を上げにくい人々であり、学生が希望を持てる社会をつくるよう、改めて自らが携わる報道の役割に関する自覚を述べられ、また学生のアクションにも期待を表明して講演を閉じられた。

 このあと、本講演会に参加していた#KuToo運動の発起人である石川優実さんから、この就活セクハラが、就活という枠を超えて、被害に会った女性の人生そのものを変えてしまうほどの深刻な問題であるという認識を、私たちが持つことが何より重要という。その上で、石川さんは、竹下さんと同様に、法改正の必要性や、学生自らが声を上げていくことの有効性を強調した。


参加者の声
  • 私は留学生です。自分はもともと化粧をすることに抵抗がありますが、日本での就活においては周囲に合わせざるを得ないと感じます。先日、学内でインターンシップの事前準備のマナー研修に参加しましたが、スーツ&スニーカーで行ったら、色々と指摘をされ、もやもやしました。就活用の写真も5,000円以上の費用がかかる上、そのことで相談をしたら、見た目が大切とメイクを勧められました。でも今回の講演で、これでよいのだと自信を持てました。
  • 多様な事例を伺い、想像以上に色々な問題が起こっていると感じました。インターネットの発展で声を上げやすくなったことで、お話があったようなことが白日の下にさらされるのは、世の中をよくしていくためには良い事だと感じました。一方、マッチングアプリ等は、当にインターネットによって生み出された問題でもあり、若者へのインターネットリテラシー教育が必要だと感じました。
  • 私はお化粧が好きだし、ヒールもそんなに辛いと思ったことがないし、既存のマナーに疑問を持ったこともなかったのですが、そうではない人、健康に害を及ぼすほど苦しんでいる人がいるのだということが身に染みてわかりました。女性らしさや、こうであるべきといった信念は、私のように無意識に持ってしまっている人が多いと思うので、社会全体が変わるには時間がかかってしまうかもしれませんが、他人を傷つけない思いやりの心を持つという基本的なことができれば、必ず変わっていけると思うので、まずは私が加害者にならないように気をつけたいと感じました。

竹下 郁子氏

講演会場の様子