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春季人権週間プログラム講演会『マイクロアグレッション―日常生活に埋め込まれた無自覚の差別―』をYouTube Liveにて開催しました。講師に立命館大学国際関係学部国際関係学科准教授の金 友子(きむ・うぢゃ)氏をお招きし、"Microaggressions in Everyday Life"の日本語版『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション』の概要を紹介いただくとともに、日本の中にあるマイクロアグレッションについての研究会での議論やご自身の考えを講演いただきました。
2021年度春の人権週間プログラムでは、立命館大学国際関係学部国際関係学科准教授の金 友子(きむ・うぢゃ)さんの講演をオンラインで伺いました。参加申込みは300名を超えました。
金さんのお話が終わった後、オンラインで視聴していた方が、自らの体験を語り始めました。大学生のとき、在日コリアンが多く住む地区の子どもたちと遊ぶサークルに加わり、在日の青年と親しくなった、酒の席で「おれは差別なんてせいへんよ。おれもお前も同じ人間やないか」と発言したそうです。すると、その青年は彼の胸ぐらをつかんで怒りだしたというのです。
なぜ、在日の青年は激怒したのでしょうか。
金さんには、在日コリアンの女性の経験に立脚して、日常生活に埋め込まれた「攻撃アグレッション」について、具体的に語っていただきました。「日本語うまいね、いつ日本に来たの?」「日本人と変わらないよ、同じだよ」「毎日キムチ食べている?」。日々投げかけられるそうした言葉に、金さんは「息苦しさ」を覚え、やがてそれが蓄積して「生きづらさ」を感じるようになったとのことです。
マイクロアグレッションとは、日常生活に埋め込まれた差別です。ヘイトスピーチやハラスメントは、明らかに間違っています。それに対して上に掲げた言葉は、間違っていません。しかし、誰が誰に対して向けた言葉なのか、という点を見落としてはいけません。発話者は日本語の流暢さをほめようとしているのかもしれないし、「同じだよ」となぐさめているのかもしれない。単に関心を持っていることを示そうとしているだけかもしれません。しかし、そのような発言をする相手の心には、一本の境界線が引かれています。その線の「こちら側」が発話者よりも少数者であったり、立場が弱かったりした場合、線の「あちら側」にいる相手のなにげない発言に、心が傷つけられるのです。いや「なにげない」からこそ、より深く傷つけられるともいえるでしょう。
こうした「なにげない差別」は、学術的な概念が与えられることで、はじめて認識の対象とすることができます。その概念が、マイクロアグレッションです。金さんが加わったチームが翻訳したデラルド・ウィン・スー(マイクロアグレッション研究会 訳)『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション』(明石書店、2020年)では、「マイクロアグレッションとはありふれた日常の中にある、ちょっとした言葉や行動や状況であり、意図の有無にかかわらず、特定の人や集団を標的とし、人種・ジェンター・性的指向・宗教を軽視したり侮辱したりするような、敵意ある否定的な表現のことである」と定義されています。
もし線のあちら側から投げかけられた言葉で息苦しさを感じたら、「それはどういうことですか?」と問いかけ直すことが大切だと、金さんは指摘します。本稿の冒頭で紹介した方も、在日コリアンの青年の怒りを受けて、自らの心の中に境界線があることを自覚し、人生の転機の1つになったそうです。
(文学部 上田 信 教授)