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2022年6月16日(木)SPIRITのInternet Explorerサポート終了について

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​​​​​​​ 秋季人権週間プログラム講演会『インターネット上のヘイトスピーチー根絶と被害者救済に向けて』を対面・Zoomウェビナーにて開催しました。この問題に長年取り組まれてきた 師岡 康子 弁護士を講師にお招きし、問題の経緯と現状、根絶と実効性のある被害者救済のために取り得る方策などについてお話しいただきました。

日時2023年12月8日(金) 18:00~19:30
会場対面 池袋キャンパス8号館1階8101教室
オンライン Zoomウェビナーにて配信
講師師岡 康子(もろおか・やすこ)氏 (弁護士)

講師プロフィール
師岡 康子(もろおか・やすこ)
弁護士。東京弁護士会外国人の権利に関する委員会委員。国際人権法学会理事。
早稲田大学非常勤講師。外国人人権法連絡会事務局長。
人種差別撤廃NGOネットワーク共同世話人。
著書に『ヘイト・スピーチとは何か』(岩波新書 2013年)、外国人人権法連絡会『Q&Aヘイトスピーチ解消法』(監修・共著 現代人文社 2016年)、ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク編『根絶!ヘイトとの闘い――共生の街・川崎から』(共著 緑風出版2017年)など。
参加者本学学生、教職員、一般
合計81名
講演内容

 ヘイトスピーチは人種等の属性を理由とする、言動による差別、とりわけ差別の煽動と定義されます(2016年ヘイトスピーチ解消法2条参照)。

 師岡氏は、その本質は、人・集団を二級市民若しくは社会の外にあるものとして社会の一員として認めず、劣った若しくは邪悪な異質な集団として攻撃する言動にあり、その害悪は「マイノリティに属する人々に対する害悪」にとどまらず、差別・暴力を浸透させ、マイノリティ及び平等に関する言論を委縮させ、民主主義を破壊し、ジェノサイド、そして戦争へ導く、つまり差別が社会を破壊する「社会全体に対する害悪」である、(その点で差別的動機につながる犯罪=へイトクライムに至る)と捉えます。例えば「ナチスのユダヤ人などの虐殺」、直近は「在日特権を許さない市民の会(以下、在特会)」ら右派デマゴギーを誘因とする在日コリアン差別暴力事件「京都府ウトロ地区民家等連続放火事件」(2021年)等です。

 国際社会における闘いの到達点は、ネオナチ旋風を契機に成立した1965年人種差別撤廃条約―9つの最低限の基準等(実態調査・法制度の洗い直し・平等な人権を保障する法制度・人種差別禁止法・処罰・人種差別撤廃教育・被害者救済保護・国内人権機関・通報制度)及び「包括的反差別制度」―です。

 1995年に日本政府は批准しますが、当初「現行法で対処できている」と、国内法制定には消極的でした。以後、ヘイトスピーチへの刑事規制を含む厳しい人種差別撤廃委員会勧告(2001、2010、2014、2018年)を受け、第一次安倍政権(2006年)以降の右派的政治状況下で在特会が結成され、2013年以降にヘイトデモ・街宣が悪化し、市民の抗議が活発化するなどヘイトスピーチが社会問題化し、2016年にヘイトスピーチ解消法が成立しました。

 ヘイトスピーチ解消法には、たしかに国内初の反人種差別撤廃法整備の出発点の意義があります。一方で包括的人種差別撤廃基本法ではなく差別言動を対象とする個別法であること、基本法が備えるべき基本方針・基本計画策定義務、国会報告義務、実態調査義務、施策を検討する専門機関設置義務、財政措置もなく、「禁止規定、制裁規定、救済手続がなく実効性が弱い」点で課題が残りました。

 法成立後にデモは減少しますが、ヘイトスピーチ全般は減少せず、マスコミの嫌韓・嫌中流の日常化、匿名者のネットでの差別書き込み、ヘイトクライム(脅迫・名誉毀損・侮蔑事件)も起こっています。特に匿名者のネットヘイトの増加への対応に、例えば法務局・地方公共団体による削除要請・プロバイダによる削除が「任意」であるなど限界があります。

 講演後にフロアーから、法適用対象―すべてではない「適法に居住する」外国人のみ―の問題点、包括的な人種差別撤廃法への課題について質問があり、いずれも自治体立法(条例)レベルでは実現しつつある例が紹介されました。総括として、参政権のない外国人へのヘイトスピーチ問題は、そのような差別・暴力を生む社会に生きる国民全体の「声を上げる」市民運動的課題ではないのかと提起されました。

(学校・社会教育講座 森田 満夫 教授)

参加者の声
  • 法的な課題、解決策などがよくわかった。ヘイトスピーチを行う側の意識やその背景などについても知りたいと思った。
  • 非常に意義あるご講演、そしてその企画をありがとうございました。また、冒頭の総長の挨拶も、抽象的な導入ではなく、ご自身の閲歴の中で形成されたヘイトクライムへの問題意識が語られるもので、大変によかったと思います。師岡先生のお話では、「これをやれば褒められると思った」、「いいことをしているのだと思った」というようなウトロ放火者の証言が心に残りました。これは津久井やまゆり園事件の加害者の言い分と類似しています。彼らは、為政者含む公人が加わって(時には率先して)構築してきた差別容認の空気に呼応するように憎悪犯罪をしたともいえるでしょう。そのような社会の構成員である自らの責任を痛感しました。これを常態としてはいけない。差別の習慣に介入するための力としての声を上げていく、これを実践したいと思います。
  • 近年の師岡先生の活動を改めて知ることができ、大変参考かつ良い刺激になりました。
  • ネットのヘイトスピーチに苦しむマイノリティの方のためにも、できることに取り組んでいくべきだと感じました。ヘイトスピーチ解消法について理解していなかったので、勉強になりました。
  • ヘイトがはびこるネット空間の恐ろしさ、書き込む人間と同調する人間の浅ましさに怒りを覚えます。同時に、違法であることを明確化する法整備を怠る立法にも怒りを覚えます。「自分はしないから」からの脱却を自分自身に課さなければならないと思いました。
  • 今回の内容について、拝聴しなければ知らないままであったことの怖さを改めて痛感しました。業務に直結するか否かではなく、大学に連なるものとしては理解しておかないといけないと思いました。