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2022年6月16日(木)SPIRITのInternet Explorerサポート終了について

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​​​​​​​ 春季人権週間プログラム講演会『トランスジェンダーと現代社会、そして大学』を対面・Zoomウェビナーにて開催しました。講師に、倫理学者で群馬大学准教授の高井 ゆと里(たかい・ゆとり)氏をお招きし、トランスジェンダーの人々が置かれている環境を正しく理解する必要性、また、大学という場所におけるトランスジェンダー当事者の状況についてお話いただきました。

日時2024年6月26日(水) 18:00~19:30
会場対面 池袋キャンパス11号館 地下1階AB01教室
オンライン Zoomウェビナーにて配信
講師高井 ゆと里(たかい・ゆとり)氏 (倫理学者・群馬大学准教授)

講師プロフィール
高井 ゆと里(たかい・ゆとり)
1990年生まれ。倫理学者、群馬大学准教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学。東京大学/博士(文学)。
国立がん研究センター特任研究員、石川県立看護大学講師などを経て、2022年より現職。
訳書にショーン・フェイ『トランスジェンダー問題-議論は正義のために』(明石書店、2022年)、テレサ・ソーン&ノア・グリニ『じぶんであるっていいかんじ』(エトセトラブックス、2024年)、著書に『極限の思想 ハイデガー 世界内存在を生きる』(講談社選書メチエ、2022年)、『トランスジェンダー入門』(共著、集英社新書、2023年)、『トランスジェンダーQ&A-素朴な疑問が浮かんだら』(共著、青弓社、2024年)、『トランスジェンダーと性別変更』(編著、岩波書店、2024年)など。
参加者本学学生、教職員、一般
合計380名
講演内容

 2024年度人権・ハラスメント対策センター主催の春季人権週間プログラム講演会は、学生部、ジェンダーフォーラム共催で、群馬大学の高井ゆと里先生をお招きし、ご講演いただきました。

 ご講演は、「今日の絶対的な出発点」として「トランスジェンダーの人々はこの社会に生きている」ということ、「どこかにいる人たちではなく、これまでも、これからも、ここにいる/共にいる人たち」であるということの共有から始まりました。

 トランスジェンダーとは、「出生時に登録された性別に標準的に期待されるものとは異なる性別の現実を生きている」人であり、「性別の多元性」の現実が、“心の性”と“身体の性”のみを使った説明ではとりこぼされてしまうことが指摘されました。この具体的な指摘は特に印象的であり、高井先生はそのことを、①ジェンダー・アイデンティティ、②身体の性的な特徴、③公的書類に書かれた性別、④生活している性別【職場】、⑤生活している性別【服屋】という具体的な5つの観点を挙げて説明してくださいました。

 ご講演の後半では、労働と貧困、メンタルヘルスといった、トランスジェンダーの人々が置かれている現代社会の問題に言及されるとともに、トランスジェンダーの人を構造的に排除しない、即ち全ての人にとってよい世界とは何か(外見で人が差別されない世界、書類の記号や過去を理由に差別されない世界、身体の特徴で差別されない世界、生殖の権利や身体の安全が守られる世界)ということが取り上げられていきました。そして、最後に大学とトランスジェンダーというテーマで、いくつもの重要な指摘・提言が高井先生からなされました。それは、何より大学にはトランス学生もトランススタッフもいる、という大前提に立つこと、そしてトランス学生の修学環境と安全を守り、トランススタッフの就労環境と安全を守ることの具体化が切実に必要であるということです。学生もスタッフも、通称名の使用、法的登録とは異なる性別登録が制度上、当たり前のこととしてできるようにする必要があると、強調されました。通称名使用制度に関する“やめてください3要件”として、(1)性別不合・性同一性障害の診断書、(2)学内保険医の診断書・意見書、(3)親の同意、を挙げられていましたが、この提言は、本学の現状に関しても直接関わる内容であると考えられます。高井先生は、最後に、改めて冒頭の言葉とつなげて、トランスジェンダーの人々は、これまでも、これからも大学と関わっている、ということを出発点とすること、そして、トランスジェンダーの人々が安全に大学と関われるように、安全を一緒につくる仲間になってほしい、と呼びかけてくださいました。この呼びかけに、今、そしてこれから、わたくしが、そしてわたくしたちがどのように応答し続けていくか、まさに問われていると受けとめました。当日の会場やオンラインでの参加者からも、学外の教職員など、大学スタッフからの、現状を変えていきたいが自分の大学でできることは何かという質問が多く寄せられたことが、高井先生から紹介されましたが、長い歴史を変えるのは時間がかかるということを覚悟するとともに、大学スタッフには学生を信じてほしいし、仲間になって、仲間を増やしていってほしいとの願いを語られました。貴重な、多くの気づきをもたらす機会となった今回のご講演をお引き受けいただいた高井先生に、改めて厚く御礼申し上げます。

(文学部 奈須 恵子 教授)

参加者の声
  • 「多様性」という言葉が誤魔化しであるというのは目から鱗で、自分が従来感じていた生きづらさや息苦しさがすっと楽になったように感じた。学生・教職員の「安全」を守ること、構造的排除を告発していくことは、公正さや基本的人権の問題であると思う。
  • トランスジェンダーの存在に気づかないことが、どんなに当事者を傷つけているかということや、さまざまなタイプのトランスジェンダーがいることがわかり、正しく理解し接することが大切だと痛感しました。
  • 排除は「する」ものでもあるが、「ある」ものでもあるという言葉がすごく印象に残りました。前者の意味で捉えてしまいがちになってしまうからこそ、排除は中々消えないのではないかと、しみじみ感じました。排除は直接攻撃しなくても、そこに「ある」可能性があることを肝に銘じていきたいと思いました。また、トランスジェンダーの方々を、心の性と身体の性が異なる方々という認識をしていましたが、そもそも性にはもっと種類があるということも学べて、自分の視野が広がりました。
  • 大学に勤めるものとして、周囲の無理解を乗り越えるために自分はどうしたら?ということを考えながら受講しました。最後の「時間がかかる」ということ「無理解をどうにかするよりも、自分が横のつながりをつくること」というのは本当に響くものがありました。自分が苦しいという状態を話せる仲間を増やしていくところから進みたいと思います。
  • 人に接する仕事をするにあたってとても大切なお話が聞けて、参加させていただいて本当によかったです。特に、特定の人間像を前提とすることが「構造的排除」になってしまうことは、私が普段何気なくしていることがそうなっていないか、よく振り返る必要があると思いました。また、私自身が(セクシュアリティ以外のことですが)受けた差別について考える大きな手掛かりもいただいた思いです。これからゆっくり考えていこうと思います。
  • 全ての大学関係者や、ハラスメント対応の関係者に聞いてほしい内容だった。トランス差別については数年にわたって心配・情報収集して、自分なりに状況の改善に少しでも貢献できるよう生活してきたつもりだったが、高井さんの力強い言葉を聞いて勇気が出たし、自分も自分の持ち場で頑張ろうと思った。トランスだけでなく、女性差別や障害者差別にも言及されていたことが印象的だった。