2022年6月16日(木)SPIRITのInternet Explorerサポート終了について
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春季人権週間プログラム講演会『トランスジェンダーと現代社会、そして大学』を対面・Zoomウェビナーにて開催しました。講師に、倫理学者で群馬大学准教授の高井 ゆと里(たかい・ゆとり)氏をお招きし、トランスジェンダーの人々が置かれている環境を正しく理解する必要性、また、大学という場所におけるトランスジェンダー当事者の状況についてお話いただきました。
2024年度人権・ハラスメント対策センター主催の春季人権週間プログラム講演会は、学生部、ジェンダーフォーラム共催で、群馬大学の高井ゆと里先生をお招きし、ご講演いただきました。
ご講演は、「今日の絶対的な出発点」として「トランスジェンダーの人々はこの社会に生きている」ということ、「どこかにいる人たちではなく、これまでも、これからも、ここにいる/共にいる人たち」であるということの共有から始まりました。
トランスジェンダーとは、「出生時に登録された性別に標準的に期待されるものとは異なる性別の現実を生きている」人であり、「性別の多元性」の現実が、“心の性”と“身体の性”のみを使った説明ではとりこぼされてしまうことが指摘されました。この具体的な指摘は特に印象的であり、高井先生はそのことを、①ジェンダー・アイデンティティ、②身体の性的な特徴、③公的書類に書かれた性別、④生活している性別【職場】、⑤生活している性別【服屋】という具体的な5つの観点を挙げて説明してくださいました。
ご講演の後半では、労働と貧困、メンタルヘルスといった、トランスジェンダーの人々が置かれている現代社会の問題に言及されるとともに、トランスジェンダーの人を構造的に排除しない、即ち全ての人にとってよい世界とは何か(外見で人が差別されない世界、書類の記号や過去を理由に差別されない世界、身体の特徴で差別されない世界、生殖の権利や身体の安全が守られる世界)ということが取り上げられていきました。そして、最後に大学とトランスジェンダーというテーマで、いくつもの重要な指摘・提言が高井先生からなされました。それは、何より大学にはトランス学生もトランススタッフもいる、という大前提に立つこと、そしてトランス学生の修学環境と安全を守り、トランススタッフの就労環境と安全を守ることの具体化が切実に必要であるということです。学生もスタッフも、通称名の使用、法的登録とは異なる性別登録が制度上、当たり前のこととしてできるようにする必要があると、強調されました。通称名使用制度に関する“やめてください3要件”として、(1)性別不合・性同一性障害の診断書、(2)学内保険医の診断書・意見書、(3)親の同意、を挙げられていましたが、この提言は、本学の現状に関しても直接関わる内容であると考えられます。高井先生は、最後に、改めて冒頭の言葉とつなげて、トランスジェンダーの人々は、これまでも、これからも大学と関わっている、ということを出発点とすること、そして、トランスジェンダーの人々が安全に大学と関われるように、安全を一緒につくる仲間になってほしい、と呼びかけてくださいました。この呼びかけに、今、そしてこれから、わたくしが、そしてわたくしたちがどのように応答し続けていくか、まさに問われていると受けとめました。当日の会場やオンラインでの参加者からも、学外の教職員など、大学スタッフからの、現状を変えていきたいが自分の大学でできることは何かという質問が多く寄せられたことが、高井先生から紹介されましたが、長い歴史を変えるのは時間がかかるということを覚悟するとともに、大学スタッフには学生を信じてほしいし、仲間になって、仲間を増やしていってほしいとの願いを語られました。貴重な、多くの気づきをもたらす機会となった今回のご講演をお引き受けいただいた高井先生に、改めて厚く御礼申し上げます。
(文学部 奈須 恵子 教授)