2022年6月16日(木)SPIRITのInternet Explorerサポート終了について
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春季人権週間プログラム講演会『ハラスメントとDEI(Diversity, Equity & Inclusion)―日本と世界の現状とこれからについて』を対面・Zoomウェビナーにて開催しました。講師に、北海道大学大学院文学研究院特任教授の櫻井 義秀(さくらい・ぎしゅう)氏をお招きし、DEIに関する世界と日本の動向を踏まえつつ、ハラスメント問題からDEIへの理解を深め、私たちのあるべき姿勢と今後の社会についてお話いただきました。
今回の人権・ハラスメント対策センター主催の春季人権週間プログラム講演会は、北海道大学の櫻井義秀先生をお迎えして、『ハラスメントとDEI―日本と世界の現状とこれから』をテーマとして「DEI」について考える内容となりました。「DEI」とは、多様性の「Diversity」、公平・公正性の「Equity」、包摂性の「Inclusion」の頭文字の略称です。櫻井先生はご自身の経験と社会学の知見を交えながら丁寧にお話しされました。
まず、導入の小話として過去に運営された二つの東アジアの宗教学会でのご経験についてお話しされました。ある学会では多様性を尊重して特定の言語がヘゲモニーを握らないように、それぞれの報告者が母国語で報告をおこなう代わりに通訳を雇いましたが、莫大な費用がかかりました。一方、別の学会では運営面の効率性を重視して、共通語である英語を使用するようにした結果、効率的な運営が可能となりましたが、標準的な「北米の社会学の学会」のスタイルになりました。櫻井先生はこれを「北米の社会科学に支配されている東アジアの宗教研究」とおっしゃっていました。何かを犠牲にしつつ物事をまとめ上げる工夫が重要で、多様性という理念は良くてもそれだけで突き進むことができない、という現実について改めて考えさせられました。
次に、企業や社会における多様性の重要性について、「部分(個別)最適と全体最適」という考えを用いてお話しされました。例えば、会社のある部署の従業員の同質性が高まることによって、まとまりがでて、生産性や効率性が上昇することが言われています。しかし、もし、その会社のビジネスモデルが大きく変化すると、これまでとは異なる発想を持つ従業員が必要となりますので、会社・グループ全体でみると、多様な考えを持つ従業員の存在が新しい成長戦略のために重要となります。ただし、先程の学会の運用のお話しでもありましたように、マネジメントが難しくなる、というトレードオフの問題には注意が必要です。
最後に、「DEI」のポリシーについてお話しされました。何か問題が生じて、加害者想定の人に対して注意・処分をおこなう可能性がある場合、公正さ・正義の問題は非常に難しいので、制度的に対処することの重要性を強調されていました。そして、「Diversity」を推進するにはプログラムを実施して、それを評価することを繰り返しおこない、少しずつ制度を改善することの意義について強調されていました。「正義感とは何か」は非常に難しい問題です。それぞれがそれぞれの「正義感」を持っており、そこから逸脱した場合、批判する人たちがいます。ネット社会では、これが増幅されて「キャンセルカルチャー」という社会的に排除しようとする動きが生じます。こうならないためにも、単に批判するのではなく、どうすればいいのかについて一緒に話し合いをすることの意義について強調されていました。
今、「DEI」が叫ばれていますが、今回の講演会でこの問題の重要性と難しさを改めて感じました。最後になりましたが、貴重な、多くの気づきをもたらす機会となった今回のご講演をお引き受けいただいた櫻井先生に、改めて厚く御礼申し上げます。
(経済学部 山本周吾 准教授)