「RSL-コミュニティ(埼玉)」の授業の後半では、アスポートでの学習支援活動をして感じたことを グループで共有しながら、今後アスポートにあったらいいと思うシステムや企画を発表することになった。この最終プレゼンにはアスポートのスタッフの方にも来ていただき、フィードバックをいただいている。私たちのグループは「体験学習の拡充」をテーマに、勉強以外の体験学習の取り組みを提案した。
私は「体験学習」の中でも『学生サークル・ダンス』に焦点を当て、ワークショップの企画を提案した。ダンスの企画を提案した理由はいくつかあるが、一番は自分自身が小さいときから習っていてダンスをすることが好きだからだ。そして私はダンスによってたくさんの人とつながってきた経験がある。人とのつながりの素晴らしさを感じてほしい、純粋に身体で表現する楽しさを知ってほしいという想いから、いつか子どもたち向けのダンスワークショップをやってみたいと思っていた。もう一つ決め手となったのがボランティアのときに出会った中学2年生の女の子の言葉だ。ダンスをやっているという話をしていたときに「ダンスを習いたいけど、遠いしお金かかるからできない…」と話してくれた。もし学習支援教室で子どもたち向けのワークショップができたらきっと楽しんでくれるだろうなと思い、提案を決めた。
体験学習の提案の中には、プロの講師を外部から呼ぶというものもあったが、私は学生サークルと連携することを提案した。費用の面で負担が少ないことが大きなメリットとしてあるが、その他にも講師をするサークルの学生にいろんな背景を持つ子どもがいるという現状を知ってもらえる、子どもにとっては年の近い大学生と関わる機会をつくれるなどの利点があると思ったからだ。
私が具体案として提示したのは、「映像×ダンス」のワークショップだ。プロジェクターを使って壁に映像を映し、映像と曲に合わせてダンサーが踊るというものだ。そのような活動をしている先輩が身近におり、2人の人柄にも魅力を感じていたので、例に挙げて発表した。
授業が終わってすぐ、授業を担当している田中聡一郎先生から「最終プレゼンのときに発表した内容が実現できそうだし、ぜひやってほしい」とメールが届いたことがきっかけでこの企画が実現することが決まった。もともと学習支援のボランティアを始めたときから実現させたいと思っていた「ダンスワークショップ」。すぐに「ぜひやらせてください!」と返信した。
依頼したのはサークルの4年生で、1人はダンサーの方。もう1人は映像制作の方。卒業してもそれぞれのアーティスト活動を続けていく方たちだ。2人はチームを組んでおり、「ダンス×映像」の作品を手掛けている。実績を上げていることはもちろん、私が信頼している先輩方でもあったのですぐに声をかけた。快く引き受けてくださり、2019年6月に開催することが決まった。
開催するにあたり、どのような子どもたちがいて、どのようなワークショップにしてほしいのかを2人の先輩方に伝えた。今回は中学生ではなく、小学生に向けてのワークショップになったため、話合った結果、子どもの集中力も考えて1時間のワークショップを2回(2日間)やることになった。内容はゲーム感覚で身体を動かせるものに決まった。ワークショップの詳しい内容は先輩方にお任せし、私は教室の様子を知ることに徹することにした。
ボランティアとして何度か参加していた中学生の部は、教室がどんな様子か把握していたが、小学生が対象のジュニアアスポートの教室の様子は全く知らない状況だった。そこで、ワークショップ開催の前の週に実際に学習教室に出向くことにした。ジュニアアスポートでは、中学生の部との違いが多く見られた。例えば、小学生でも集中力が切れないように工夫された全体のスケジュールである。勉強タイムが2回、体験活動の時間、歌の時間、ご飯というように学童保育の活動のような内容で充実した運営をしている。毎回「体験活動の時間」が組み込まれているのがいいなと思った。見学したときには、ワークショップで映像を映すにあたって必要な機材や、映像を教室のどこに映すのか等も確認した。単純に「見に行かないと不安だな」という気持ちで急遽事前に見学することを決めたが、行ってみると子どもたちの雰囲気やニーズも知れて、ちょっぴり仲良くもなれて、あのとき行って良かったと感じている。
ワークショップ当日、先輩方が用意してくださったワークショップの内容、映像、振付に驚いた。曲のリズムに合わせて出てくる映像と同じタイミングで手や足を動かす音ゲームのパート、振付を踊るパートで1曲を完成させるというものだ。小さい子でも、ダンスをやったことがない子でも楽しめる内容だった。
1回目のワークショップには5人の子どもとアスポートの方、見学に来た先生方など、たくさんの人が参加してくれた。子どもたちはすぐにふざけてしまったりする面もあったが、とても楽しそうに身体を動かしていた。
1週間後に開催した、2回目のワークショップでは、「1回目は来られなかったけれど、どうしてもワークショップに参加したくて学習教室に来た」という2人の子も加わった。先輩方も映像、振付ともに 1回目のワークショップよりも難易度の高いものを用意してくれた。1回目のときよりも子どもたちとの距離も近くなり、帰り際には「また来る?」と聞いてくる子もいた。
このワークショップの感想を聞かれたら、純粋に「楽しかった」と答える。子どもたちがきらきらした目で「楽しかった!」と言っているのを見て、私も嬉しくなった。アスポートの方にも「ぜひまた来てください」と声をかけていただいた。先輩方にも楽しんでいただけたようだった。このワークショップは私一人の力ではできなかったことだからこそ、周りの方に喜んでもらえたことが嬉しかった。目標にしていたワークショップがまさか実現するとは思っていなかったが、「RSL-コミュニティ(埼玉)」を履修したからこそ、この機会をいただけたのは確かだ。協力してくださったアスポートの方、機会をくださったRSLの先生方、子どもたち、先輩方。全ての方の温かさを感じ、とても感謝している。この経験をここで終わりにせず、また新たな企画を考え、実現させたい。