2016年度春学期「学びの精神」授業実践例①(全カリニュースレターNo.40より)
全学共通カリキュラム
大学生の学び・社会で学ぶこと
担当:原田 晃樹 教授
この授業は「サービスラーニング」と呼ばれている科目群で、まだ始まったばかりのため学内でも馴染みがないと思います。このサービスラーニングという科目は、
一言で申し上げますと社会活動を通じて市民性を育む学習ということで、座学で得た知識を現場で活かし、そこから具体的に実践的な学びを得て、社会に貢献をするという、市民性を育む教授法であります。実践で得た学びを、再び自分の専門科目に活かしていこうといった双方向のフィードバックを意図した考え方です。なお、本学は2016年度よりサービスラーニングセンターを設置し、ボランティアセンターと一体的に運営を行っています。ボランティアでは見返りを求めませんが、学習が見返りであるサービスラーニングはボランティアと似ています。
2016年度春学期で私が担当したのは「大学生の学び・社会で学ぶこと」という、社会に対し問題意識を持つきっかけをつくるという科目です。そこで問題意識を持った学生に対して、より実践的な科目を履修してもらい、現場(フィールド)で体験してもらうことが狙いです。今後は、できる限り体験型の科目領域を確保するため、あらかじめさまざまな現場を用意し、学生が自由に選択できる「自由設定」科目を充実させていきたいと考えています。
授業の内容としては、前半は建学の精神やボランティアとの連接を重視しました。例えば、建学の精神については本学のチャプレンから、正課外の学びとサービスラーニングの関係についてはボランティアセンター職員から、正課教育から見たサービスラーニングの意義や特徴は全カリの担当者から、それぞれ講義をしていただきました。後半は私から、例えば大学と高校での学びはどのように違うのかといったことや、ノートテイクの手法や読書法などを話したうえで、グループ討議を2回行いました。1回目は、アメリカの自治体は住民投票で自由に独立ができるが、富裕層が効果的、効率的で自分たちの意のままに動いてくれる民主的な自治政府を作り、それ以外は税収が激減しスラム街になってしまったことをどのようにとらえるか議論し、その上で、市民や政府の役割について討議しました。2回目は、認知症の高齢者が一人暮らしで生きるために何ができるのかを討議し、そこから市民としての役割や相互扶助、そしてそれを支える
公的基盤の必要性を学び、公共サービスと行政サービスは必ずしも同じではないといったことを振り返りました。
授業を通して、特徴的で非常に重要であると感じたことが2つあります。1つ目は、この授業が建学の精神や教学理念を学ぶ貴重な機会であったということです。ボランティアセンター職員が1960年当時の履修要項を持参して学生に見せてくれたのですが、学生に求める基本的な学びの姿勢は変わっていないことに驚きました。2つ目は、この授業では4回、本学職員が講師として参画しましたが、これが学生にとってのロールモデルになったということです。今回協力いただいた職員の講師
は、大学を卒業して社会に出てから必要性を感じて改めて大学院などに通い、自分の専門知識を身に着けていった方です。それが学びの意義や社会とのかかわりを考える上で、学生には刺激になったようです。
今回の反省としては、授業のボリュームが多く、学生からのリアクションペーパーや職員の授業内容を踏まえた授業を展開する余裕がなかったことです。今後の課題としては、正課、正課外の両方を踏まえたうえでの実践的な学びをどのように促していくかということ、また、授業には教員だけでなく職員の参画や積極的なサポートを通じて議論していけるような関係が広がっていけばよいのではないかと思っています。
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授業概要(2016年度シラバスより)
授業の目標
立教生が、社会の一員として現在生起している社会問題を科学的に認識し、その解決に向けて、実際に問題に関わりながら、更に学びを深めていく視点と態度の習得を目標とする。
授業の内容
この授業は、アメリカで発祥した体験型の学習手法「サービス・ラーニング」の考え方に基づいておこなう。授業の前半は、立教大学の歴史と建学の精神を学習することを通して、「科学知(キャンパス知)」と自らの体験を通しての気づきや学びの成果である「体験知(フィールド知)」の循環的学習の方法について理解を深める。授業の後半は、担当者(原田)の専門領域と社会に存在する自分と社会の課題に関わる基礎的知識と方法について、学習する。