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2022年6月16日(木)SPIRITのInternet Explorerサポート終了について

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授業探訪(全カリニュースレターNo.45より)

全学共通カリキュラム
舞踊論
担当:糟谷 里美 兼任講師

授業の概要

 全カリの【多彩な学び】の科目に位置付けられている《舞踊論》は、社会における多種多様な舞踊を取り上げ、現象としての舞踊を理論的に捉えることにより、さまざまな視点から身体文化の1つである舞踊の意味を探究する力を涵養することをねらいとしている。
 その内容は、地域に根差した文化や舞踊家たちの芸術活動の背景に触れながら、そこに出現するさまざまな舞踊に着目し、関連する研究の成果等を紹介し考察しながら、舞踊への理解を深めていこうとするものである。

授業の特色

 この授業は、「舞踊とは何か」という問いかけを常に念頭に置きながら、歴史的・社会的背景を踏まえた上で、舞踊家の思想、作品のテーマ、舞踊の社会的影響、民族的文化の特徴、舞踊の必要性などを考察していくことを目指し ている。そのためには、作品の全体像を捉える必要があると考え、1つひとつの作品(映像)をできる限り、授業時間内にすべて観てもらうようにしており、これが最大の特色であるといえるだろう。作品やその製作現場のドキュメンタリーには、振付家の演出の工夫や、舞踊家や舞踊作家の人となり、生き様などが散りばめられており、解説を加えながらそれらを鑑賞してもらうことで、部分的な作品紹介や写真等では得られにくいさまざまな様相を、多角的・複眼的に理解してもらいたいと考えている。

授業の工夫

1)教材を選りすぐる
 14回の授業時間の中では、限られた作品しか紹介できないため、学期前半にはできるだけ分かりやすい(表情や身振りで容易に意味が理解でき、舞踊を身近に感じられる)ものを、後半にやや難解な(思考力や感性が必要とされる)ものを提示し、初歩的な知識獲得から深い考察へと学生の思考力を段階的に開拓でき得るものを選んでいる。また誰もが聴いたことのある、あるいは演奏したことのある音楽(クラシックやポップス等)を用いている作品は、さまざまな分野の学生の興味をそそり、彼らの集中力や意欲を保つ上では、欠かせない教材となっている。

2)「既知」という先入観を取り払う
 授業の中では、専門の分野では当然のことでも、分野が異なれば初めて出会う内容、耳慣れない・使い慣れない言葉が出現する。それらが十分に理解できないと、学生はその先の内容を把握できず、授業をつまらなく感じたり、理解することを止めてしまったり、という負のスパイラルが生じる恐れがある。これを回避するために、些細な言葉であっても、丁寧な説明を付け加えるようにしている。また、リアクションペーパーに記されたちょっとした疑問に回答していくことも、学生の積極性を引き出す術となる。「既知」のことという先入観を取り払い、さまざまな物事を「未知」あるいは“うろ覚え”の言葉や概念として説明を加えると、学生は確信や新たな発見を得て、授業の理解が進み、やや難解な内容も面白い、楽しいと感じるようになるだろう。

3)音量や教室の明るさを適宜調整する
 授業では、多くの映像資料を見せるが、それらはデジタル映像のみならず、古いVHS や、30年以上前のテレビ番組を録画したVHSをDVDに焼き直したものなどもあり、画質や音質がすべて良いわけではない。映像が見えにくかったり、音量が適切でなかったりすることは、学生の集中力を低下させる要因となるだろう。したがって、教室内の明るさや、マイクや映像資料の音量は、授業内でも必要に応じて随時調整し、学生が視覚や聴覚をフル活用して、映像から得る情報によって考察を深めることができる環境を保つよう努めている。

4)伝えるための話し方 ~アナウンサーのような声色・話すスピードを目指して~
 授業運営において、最も重要なポイントと思われるのは、「伝えるための話し方」である。特に大教室で200人前後の学生を対象とした授業の場合、教室の隅々まで伝わるような声色と適切なスピードが必要であると考えている。NHKのアナウンサーは、400字(原稿用紙1枚)を1分で読むそうだ。明確な声、適切な抑揚と“間”、速すぎず遅すぎないスピードが求められる。実はここだけの話ではあるが、授業で話すことを事前に言葉に出して練習してから、授業に臨むようにしている。そうすると、学生への説明が明確になるのみならず、授業の中で説明にかかる時間を把握でき、映像資料に割ける時間も自ずと分かり、授業運営がスムーズに遂行できるというメリットもある。

リアクションペーパーからの提案

 リアクションペーパーは、自身の授業について振り返る材料をたくさん提供してくれる重要なものである。
 授業方法について、「系統図があった方がよい」といったコメントは、学生が何を知りたいのか、どのような資料を必要としているのかを示唆するものであろう。一方、「ヒントだけ与えられて、私たち次第でさまざまな視点を持たせてくださる先生のスタイルがとても良かった」という、断定的な説明や資料の回避を肯定的に捉える学生もいる。
 全学部共通の科目であるがゆえに、学生のこれまでの経験や興味・関心によって、授業に求められるものが多様であることは否めない。しかし、すべての学生がある程度納得のできる内容・方法や教材・資料を精査していくことは、授業のねらいを学生に伝えていくために、必要不可欠であると感じている。 

おわりに

 リアクションペーパーに、「自分の中で“ダンスの概念”がとても大きく変化した」「今後他のことを学ぶ時には、色々な視点から考えていこうと思う」といったコメントがあると、この授業の目標が達成されていることを認識でき、素直にうれしいものである。また、授業に対する次のコメントは、全カリという教養科目ならではの醍醐味を感じさせるものである。

 「授業全体を通してとても多くのものや新しい価値観を手に入れたように思います。」
 「踊りのことだけではないものも学べた気がしています。」
 「舞踊論を通して、私も自分自身を見つめ直すきっかけになりました。」
 「人が輝く、心の底から好きといえるものに向ける熱意には何もかなわないのかもしれない。それをこの舞踊論から教わった。」

 このようなコメントが得られたのは、20年以上にわたり大学教育の柱の一つとして築き上げられてきた全学共通カリキュラムの多種多様な授業によって、学生が柔軟な思考力を獲得してきた結果であると考えられる。また、全く関心のなかった分野の授業でさえ、柔軟な思考力を以って受講し、考え、何かを発見し、活かしていく、という全カリにおける学生の姿は、大学教育本来の姿を体現しているともいえるだろう。このような学生の姿勢やコメントから、 全カリという教養科目の重要性を再認識することになるとは、思いもよらなかったが、今後も学生一人ひとりの思い に寄り添いながら、授業の改善を図り、《舞踊論》の授業を深化させていきたい。

全カリニュースレターNo.45はこちら

授業概要(2018年度シラバスより)

授業の目標

本授業は、社会における多種多様な舞踊を取り上げ、現象としての舞踊を理論的科学的に捉えることにより、様々な視点から身体文化の一つである舞踊の意味を探求する力を涵養する。 

授業の内容

本授業は、地域に根差した文化や舞踊家たちの芸術活動の背景に触れながら、そこに出現する様々な舞踊に着目し、関連する研究を通じて、舞踊への理解を深めていく。取り上げる舞踊は、「生活文化の中の舞踊」「芸術としての舞踊」「教育としての舞踊」「身体科学の中の舞踊」等である。授業内では、映像を適宜用いながら、舞踊について考察していく。