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2022年6月16日(木)SPIRITのInternet Explorerサポート終了について

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―ミックス型授業への挑戦― 総合系科目・コラボレーション科目「演芸の世界」 (全カリニュースレターNo.49より)

全学共通カリキュラム
演芸の世界
担当:細井 尚子 教授

 本コラボレーション科目では、グローバル化時代に生まれた学生が、日本が近代化によって経験した変容と、グローバル化の到来によって生じた新たな変容について理解することを目的としている。こうした変容を人々の娯楽世界から見ようというもので、その背景には近代化の下、忘れられてきた大衆的な芸態の復活現象がある。コラボレーション科目は3人の講師が協働して行う。この形だからこそ可能な授業をと考え、気楽に楽しめる娯楽空間である寄席に注目した。そこで演じられる多様な芸態をサンプルに授業内容を構成し、「1回3コマ集中開講」という形を予定していたが、今年度は新型コロナウイルス感染予防のため、1回2コマ(全7回)の構成とし、教室でもオンラインでも受講できるミックス型で開講することになった。

 最終回を除く授業は4つのブロックで構成している。最初にその芸態の歴史や特徴などの基礎的知識を講義と関連映像で学ぶ。次にその芸態の演者が実際に学生の前で芸を披露し、学生は観客としてその芸態に触れる。演者は自身の芸態や修業時代の話、演じる上での難しさなども学生に伝える。これは、学生が基礎的知識として得た情報や観客として実際に芸態に触れた実感に加え、人によって演じられ、継承される芸態であることを無意識にも感じ取り、情報・知識に血肉を与えることを期待した仕組みである。3つ目のブロックは学生が観客席から舞台に移って演者を経験する時間で、演者の指導の下、実際にその芸態をやってみるワークショップになる。毎回学生が楽しみながら経験する時間だが、今年度はマスク着用などの制限やミックス型ということもあって、最も心配なブロックだった。4つ目のブロックは講師2名と演者のトークセッションで、この段階までに十分に言語化されなかったもの、あるいは伝わり切っていないと思われるものをトークの中で確認したり、三者三様の考え方や意見を示して学生に考えてもらう。あとに続く学生の質問時間では毎回活発に質問が出されるが、中にはこちらが思いもつかなかった視点のものもあり、教員も大きな刺激を与えられている。そして最後に、演者から出される「お題」についてリアクションペーパーの提出を求めている。

 最終回の授業は総括と教場レポートである。総括では個々の具体例から大衆的な娯楽における日本の近代化・グローバル化による変容の問題へ帰納し、更に大衆的な娯楽自体はひとつの具体例と位置づけ、そこから近代化以降の日本について考える。教場レポートは学生が授業で得たものを土台として考えることに比重を置くため、 関連の研究成果や他者の言葉だけに頼れないテーマを設定する。毎回のリアクションペーパーと合わせて読むと、学生の学習過程・成果を如実に把握でき、本科目の授業目標の達成度を測る上で適した形式と考えている。

 心配していたワークショップについては、5
回目の「動物ものまね」がマスクを外せないために代表の学生のみ行う形になったが、その他は全員ある程度体験できたと思う。一方、オンライン受講と教室受講の双方をミックス型授業で経験した学生によると、やはりワークショップは教室でやるほうがよいとの感想があり、検討課題として講師陣の間で共有していた。そんな矢先、2021年の年明け早々に再び緊急事態宣言が発出され、6回目と最終回をオンラインのみで開講することになった。6回目の漫才のワークショップはZoomのブレークアウトセッションを用いて2人ずつ組み、2~3往復の会話による漫才を作ってもらった。ペアを変え、要求も変えて2回行ったが、なかなかの傑作ぞろいで爆笑を誘った。もし教室での対面式であったなら、マスク着用のほか、ペアになる2人の間に一定の空間を確保し、相談する声の大きさも制限せねばならなかったと思うと、オンラインだからこそ十分に実施できたワークショップだったといえるだろう。次年度以降、万一に備えて事前に準備をせねばならないが、この経験により「オンラインでもできること」ではなく、「オンラインだからできること」に構想の起点を転換することができた。これまでにない状況の中で困難の連続であったが、授業方法と成果に関して、多くの気づきを得ることができた。


「演芸の世界」を見学して〜ミックス型授業の取り組み
全学共通カリキュラム運営センター副部長 経済学部准教授 飯島 寛之

 学生の五感を通しての学びを提供しようとする科目は、オンラインだけで授業本来の目的を達成することが難しく、授業形態の模索が続いている。今回見学した「演芸の世界」もそうした科目の一つである。
 感染対策をしながら、演芸を肌で感じて理解するためにどうしたらよいのか。担当者の細井先生が授業実施案を何度も提出されて対面授業実施の可能性を模索された結果、この科目は対面とオンラインのミックスで行われることになった。「ミックス授業はどのように行われているのか」、「対面とオンラインでどのように授業の見え方が違うのか」―こうした関心を持って私はオンライン授業の様子を見る研究室と実際の教室を往復しつつ、講義とワークショップを見学させていただいた。当日は、紙切りをテーマにする授業であった。

 はじめに兼任講師である宮信明先生から、色物、とくに紙切りの研究成果に基づく基本的知識に関する講義が行われた。宮先生を映すカメラやスライドを細井先生が教卓で操作することで配信されるオンラインの授業は、オンライン参加者にも教室に来るのと同じ質を提供しているように思われた。とはいえ、2人の担当者が役割を分担していたために、宮先生の講義がスムーズに行われた側面もある。実際にこれを一人の教員が操作しながら講義するのは、慣れが必要となるだろう。また、TAやSAに求める授業支援についても従来とは違ったものになるため、そのための工夫やTAとの意思疎通が必要になることが想像された。
 休憩時間のあとは、紙切りの林家楽一さんによる実演である。流行りの「鬼滅の刃」といったリクエストにも楽一さんが応えて紙を切ると、学生から「オォ」という控えめな声とともに拍手が起こった。
 実演が終わると、ワークショップの時間。楽一さんの指示を受け、学生は持参したハサミでいくつもの形を切っていく。オンライン参加の学生も、切った紙をカメラに映して宮先生や楽一さんからコメントをもらっていた。 何枚か練習した後、今度は学生が簡易高座に上がっての体験紙切りが始まった。学生が緊張しながら高座に上がり、 ほかの学生からのリクエストを聞くと、ちょっとした話をしつつ紙を切ってはそれを披露し、リクエストした学生にプレゼントしていった。オンライン参加の学生にも募集がかけられて、画面越しに切る姿や完成作品を教室の学生や演者がみながら、出来栄えや切っていたときに考えていたことについて意見が交わされた。

 フェイスシールドをする楽一さんが紙切りする際の話がマイクで拾えていないなどの技術的な点、カメラが寄っている演者の周りで起きていること・声に置いて行かれてしまう一画面であることの難点、そして“場の空気感” を感じられることに限界がある点はオンライン授業では否めない。したがって、オンラインの参加者は、演者の息づかいや、実際に高座に上がることの緊張感や高揚感を感じることはできにくかったかもしれない。とはいえ、オンライン参加者とやり取りしながら、学生と先生方や演者がそれらの難点を少しでも克服しようと努められていたため、基本的知識の習得はもちろん、ワークショップでも教室に来た学生同様の学びを得ることができたのではないかと思う。

 コロナ禍でこれまでの学びを提供できない状況ではあるが、いずれの出席形式であっても、学生が当該授業での学びや体験を通じて、演芸における観客の意味を考えることができたのであれば、それは今提供できる学びであるに違いない。

全カリニュースレターNo.49はこちら

授業概要(2020年度シラバスより)

授業の目標

近代化からグローバル化に移行する影響を受け、娯楽市場において「演芸」の属性が新たな文脈で置換され、娯楽ソフトとして機能している。「演芸」の代表的空間である寄席とそこで演じられる寄席芸を通じて、ポスト・グローバル時代の大衆文化の特性を理解する。

授業の内容

「演芸」は「演劇」同様、近代になって定着する概念で、具体的に指す芸(芸態)は多様だが、上演空間が狭い・気楽に楽しむ消費型娯楽という点を共有する。グローバル化した現代では、ウォークマン以降定着した個別に楽しむスタイル、ライブの価値の再発見、消費者が自身の属性、芸(芸態)の属性に関わらず、日本内外のものがフラットに並ぶ選択肢の中から自身の好みにより楽しむ芸(芸態)を選択するなど、娯楽における新たな消費スタイルが定着してきた。本講座では寄席で演じられる芸に生きる方々を講師としてお迎えし、具体的なお話によって展開し、寄席の世界を理解する。