オープンデータとは、「コンピュータが処理しやすいデータ形式で、二次利用が可能なデータ」のことを指します。 近年、東日本大震災で情報の横の連携の重要性が顕在化したことや、国・自治体・独立行政法人・公益事業者等が保有する公共データのビジネス活用等への期待の高まりを背景に、今まで特定の組織や業界内等でのみ利用されていたデータを社会全体で共有できるように環境整備が進められています。
オープンデータの意義・目的
平成24年7月4日 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部において、政府は、「新たな情報通信技術戦略」及び「電子行政推進に関する基本方針」の趣旨に則り、公共データの活用促進に集中的に取り組むための戦略として、電子行政オープンデータ戦略を策定しました。 オープンデータの活用推進の意義・目的は、主に以下の3点です。
- 政策に対する分析・判断の向上による行政の透明性・信頼性の向上
- 官民の情報共有が進み、創意工夫を活かした公共サービスの迅速かつ効率的な提供やニーズや価値観の多様化への対応
- 新ビジネスの創出や企業活動の効率化による日本経済の活性化、国・地方自治体の業務の効率化、高度化
オープンデータに関する政府の取り組みや活用事例
政府の取り組み
電子行政オープンデータ戦略では、政府自らが積極的に公共データを機械判読可能な形式で公開し、営利・非営利を問わず活用を促進することを原則として定め、電子行政オープンデータ実務者会議における具体的施策の検討やロードマップの策定がなされています。 中でも、情報通信を所管する総務省では、オープンデータ流通環境の整備に向けた実証実験や調査研究が平成24年から行われ、他省庁よりも先行して保有データのオープンデータ化に取り組んでいる。
(総務省ホームページより )
活用事例
オープンデータ活用ヒアリングレポート
横浜市オープンデータ活用ヒアリングレポート
開催日 : 2015年5月13日(水)16:00~17:30
会 場 : 横浜市役所 政策局政策課政策支援センター
企 画:社会情報教育研究センター政府統計部会
参加者:政府統計部会 坂田大輔助教、菊地進氏(前 政府統計部会リーダー)、事務局 荒井美智江
2015年5月13日、社会情報教育研究センター政府統計部会では、オープンデータ活用を積極的に進めている横浜市政策局政策課のオープンデータ活用担当である関口昌幸氏へヒアリングを行った。
関口氏の説明によると、横浜市ではオープンデータ活用推進にはどのような政策が必要かを全国の自治体に先駆けて検討をはじめ、「横浜市中期4か年計画 2014~2017」の実施計画とリンクする形でオープンデータ活用の新しい概念を提唱したとのことである。
代表的な取組として、地域課題解決のための「オープンイノベーションプラットフォーム」の構築に着手し、自治体・企業・NPOが相互に連携しあう「新しい形の公共サービスの創造」を目的とした「Local Good Yokohama」を開設するに至った。この「Local Good Yokohama」は地域課題解決のためのプラットフォームを市民に提供している。そして、そこで収集した情報をもとに、必要とされるデータの見える化、Google Earth上での課題表示などを行っている。これは、市民へのオープンデータ活用のための扉を開いたものであると言える。
「Local Good Yokohama」WEB画面
この試みの特筆すべき点として、自治体はオープンデータの提供を行うが、事業実施は行わない、ということが挙げられる。よって、政策としての予算は持っていない。市の職員が政策決定と複数機関によるプロジェクト管理を適切に行うことで、実業務を民間の手に渡すことが実現した。NPO(非営利活動法人横浜コミュニティデザイン・ラボ)と企業(アクセンチュア株式会社)が、CSR(社会貢献活動)の一環として組織運営とICT基盤構築を行い、運営資金は「クラウドファウンディング」で収集したとのことである。こういった運営基盤の移管や新しい資金調達方法の確立が、旧来の枠組みにとらわれない自治体サービスの在り方を提供することに成功した秘訣のようである。また、「横浜市」という地域特性を市職員が良く理解し、各機関への連携協力を行った上での基盤構築がなされたことで、自治体が持つ課題とマッチした形で課題解決がなされたことも大きい。
こういった枠組みが構築されることで、地域企業や一般市民によるオープンデータの新たな利活用が生まれ、地域経済活性化のためのデータ活用がますます促進されることが期待される。社会情報教育研究センター政府統計部会では、今後もオープンデータの利活用に関する各自治体における取組をヒアリングし、先進事例の収集と紹介を行っていきたい。
社会情報教育研究センター 事務局 荒井美智江